子どもの視点から少年法を考える情報センター

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第4場

    坂本、真理の母里村が、椅子に腰掛けている。
    真理は、あとから登場して、立ち聞きしている。
   

坂本  真理さんは、少しずつ話してくれました。どれほど、辛いことだったかと思います。性虐待というのは、外から傷が見えないし、子どもたちも秘密にしなければならないという意識を、特に強く植え付けられてしまいます。人に話すということは、大変なことだったと思います。

里村  (下を向いている)なんていうことを。おかあさんは、まったく気づかれなかったんでしょうか。

里村  主人が、真理をひどくかわいがつており、いっしよに布団にいれて寝たり、かなり大きくなってもいっしょにお風呂に入ったりしているのは、気になっていたんです。

坂本  そのことを、ご主人におっしやったことはありましたか。

里村  どうでしたか。

坂本  真理さんは、おかあさんにそれとなく、相談したことがあるようにも言っていましたが。

里村  私は、よく覚えていないのです。

坂本  そうですか。

里村  このくらいの年齢の子どもが、被害妄想を起こすということはないんでしようか。

坂本  まったくないとはいえません。でも、真理さんの場合は、被害妄想というようなことだとは思えませんでした。

里村  まったく、なんて言う、恥さらしなことを。

坂本  真理さんの、性というものに対する考え方も、根っこのところから、ねじまげられてしまっていると思いました。真理さんが、ここへ送られてきたのは、売春などの行為が問題にされたこからだと聞いていますが、私は、幼い時からの父からの性虐待が、影を落としていると考えています。

里村  私は、どうすればいいのでしょうか。

坂本  それはお母さんご自身がお考えいただくしかありません。ただ、真理さんが今の状態から立ちあがり、自分への自信と、人間への信頼をとりもどすためには、おかあさんの存在が鍵だと思います。

里村  鍵といわれても。

坂本  簡単にいうと、ご主人をとられるのか、真理さんをとられるのかということにならざるをえないのではないてしょうか。

里村  (愕然とした様子)

坂本  真理さんは、お母さんから見捨てられたと思っているのです。父親のことは、もちろん金輪際あいたくない、ひどくすると殺してやりたいというほど、憎んでいます。でも、お母さんには、助けてほしかつた。はっきり申し上げると、真理さんは、お母さんは性虐待の事実を知っていて、見てみぬふりをしてきたと疑っています。

里村  そうですか。

坂本  真理さんに、お会いになりますか。

里村  い、いいえ。このまま帰らせてください。とてもあの子の顔は見られません。

坂本  真理さんは、自分なんか生まれてこなければよかったと思うほど、今の白分を拒絶しています。お母さんの力を貸してあげてください。

里村  (混乱しながら)どうすればいいのかわからない。私は、なんという間違いを犯してきたんだろう。どうしよう。真理ひとりに押しつけて。なんんというひどいことをしてきたんだろう。お願いです。時間をくさい。必ず、戻っててきます

坂本 お待ちしています。

   里村、退場
   真理、部屋へはいつてくる。


坂本  真理ちゃん、聞いていたの。

真理  うん。

坂本  お母さん、戻ってきてくれることを、祈ってる。

真理  (静かな口調で)いいんだよ。もう。いまさら。母さんも辛かったんだろうから。   

   坂本、真理の肩に手をかけて、いっしょに退場
   夕暮れのライト
   真理の母、顔を腫らして、旅行かばんを下げて、登場
   園長登場し、応対に出る。


園長  里村さん、どうされました。

里村  主人とわかれてきました。

園長  その顔は。

里村  ぶたれました。

園長  話は、坂本さんから聞いていました。おはいりください。

    園長、里村、舞台中央ヘ。
    真理、登場


里村  真理。

真理  かあさん、どうしたの。

里村(がくりとひざを析る)真理。許して。

真理  あいつに、殴られたの。

真理  かあさん、遅かったね。馬鹿だつた。もっと早くに、こうしておけば、よかったんだよ。

真理  どうしたんだってば。

里村  とうさんとは、別れるよ。いったい何のために、今まで繕ってきたんだろうねえ。家庭をこわしちやならない。家の恥じを外に出したくない。生活していくためにも、我慢するしかないって。

真理  かあさん。

里村  一番、幸かったのは真理だったのに。小さなお前に、みんな背負わ互せて。なんなんて、ひどい母親なんだろ。

真理  かあさん、もう、いいよ。もう、言わないで。

里村  真理、かあさん、仕事探して、家探して、真埋が帰ってこられるようにがんばるからね。だから、許して(泣きくずれる。)

真理  (その場にくずれる。)

    うしろから、登場していた杉野が、真埋に駆け寄る。

暗転


  

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もがれた翼 パートY
〜子どもたちと弁護士が
作るお芝居
この物語はフィクションです。
でも本当に
フィクションでしょうか。

児童福祉施設に送られた
子どもたち
ある日、事件が起きて、、、、
家庭で受けていた
虐待の事実が明らかになる
親に愛された経験がない
この子らを
責められるだろうか
私は何のために生まれてきたの!
私は誰かに愛されるだけの
価値がないの!
誰か、私を愛して

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国立市市民芸術小ホールにて
上演 (4月22日)


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