子どもの視点から少年法を考える情報センター

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第2場

ライトがつき、真本と杉野がはいってくる。
子どもたち、思い思いの姿勢に。朋則が上手に去る


真木 (コミカルに)はい、就寝準備、点呼を取る。一列に並べ。

杉野 ほら、さやかさん、立って。真理さん、こちらへいらっしやい。

子どもたち、ぶらぶらと舞台中央に並ぶ。

真木 だらだらするんじやない。いわれたことは、きちんとやれ。番号。

英太
 いち

さやか に

真理 さん

真木 (仁にむかって)四は、どうした。

杉野 仁君、番号よ。番号。

(ぽかんとしている)

真木 何度いったらわかるんだ。仁。点呼だ。順番に番号をいうんだよ。

 はあ。

真木 〈子どもたちの前を、行ったり来たりしながら)仁、ここにきてもう一週間だぞ。毎日の点呼のやりかたくらい、早く覚えろ。くどいようだが、君たちは、いったい何のためにここにきているのか、それを忘れているんじゃないのか。

英太、真木の真似をして、真木のうしろをついて歩く。
真木は気づかない。杉野は、やめさせようとするが、英太はやめない。
子どもたちは、くすくす笑い。


真木 乱れた生活を立て直し、学習態度を身につけ、一日も早く、親元へ帰って普通の生活をやりなおさなければならないんだぞ。そのためには、ここの規則をきちんと覚えてパンクチュアルな生活を送らなければならない。それなのに (英太に気づく) こらっ。英太。何やってる。(英太の首根っこを押さえて、頭をたたく。)

杉野 英太君、こっち、こっち、(英太を、引き離して列にもどす。)

真木
 番号、やり直し。

英太 いち、

さやか
 に

真理 さん

 し

真木
 よし

杉野
 あれっ。朋則君は。

真木 ほんとだ。朋則はどこへ行ったんだ。

子どもたち、顔を見合わせて、首をかしげる。

真木 あいつまたか。杉野さん。ほかの子たちを頼む。僕は園長先生に話して、探してくる。

真木、走って去る。

杉野 大丈夫かしら。(気をとりなおして)さあ、みんな寝るのよ。はい、布団をしきましよう。ほら、ほら、女の子はこっちの部屋へ。

子どもたち、男女に分かれて、だらだらと、布団を敷くしぐさ。杉野が、女 子の世話をしている間に、朋則が駆け込んできて、男子のふたりに、かくまわれる。
園長と真木が、下手から後ろ向きに出てきて、玄関の外の人たちに大声で応対している様子。
杉野、子どもたち、様子をうかがう。


園長 申し訳ありません。本人に事情を確かめて、改めてお詫びに伺います。どうか、今日のところは、ご勘弁ください。

真木
 お願いします。どうか、お引取りください。

園長 お怒りは、ごもっともですが、私が責任を持って、対処させていただきます。どうか許してやってください。

園長、真木、頭を下げつつ、玄関を閉め、子どもたちのところへやっくくる。
朋則が、ぽつんと離れて立っている。皆が、遠巻きにしている。


朋則 なんだよ。何がそんなにこわいんだよ。どうせ、俺は中国人だよ。日本人はきらいだよ。よってたかって、馬鹿にしやがって。

真木
 お前、また、ご近所に迷惑をかけたんだな。これで何度目だと思ってるんだ。あかつき園の評判が、また悪くなるじやないか。そのおかげでみんなが居づらくなるんだぞ。

朋則
 うるせえ。お前なんかに、俺の気持ちがわかってたまるか。どこにいたって、どうせ俺は居づらいんだよ。お前らみんな、俺のことを仲間はずれにしやがって、馬鹿にしやがって。日本になんか帰ってくるんじやなかった。自分の体の中に、お前ら日本人の血が半分流れているだと思うと、たまんねえよ。

園長
 朋則。落ち着け。やめろ。

さやか
 (一歩前へ出る)誰もそんなこと思ってないよ。ここの誰も朋則君のこと嫌ってないよ。勝手に被害者にならないでよ。みんな、きついんだよ。逃げ出したいんだよ。めちゃくちゃやってやりたいよ。でも、できないんだよ。朋則君だけがきついんじゃないよ。

朋則
 うるせえ。近寄るな。食べたり、吐いたり、お前みたいな気持ちの悪いやつは見ているだけで、むかつくんだよ。

さやか
 うっ。(顔をおおって、しやがみこむ)

杉野
 (さやかに駆け寄り)朋則君、なんてひどいことをいうの。

園長
 朋則。(朋則に近づき、肩を抱く)さやかに、謝るんだ。

朋則 (顔をそむける)

園長
 さやか、朋則はどうかしてる。先生が代わりに謝る。許してやってくれ。
さやかが言ってくれたこと、そのとおりだ。また、ゆっくり話そうな。
今夜は、朋則を優先させてもらうよ。杉野さん、真木君、あと頼むね。朋則、今夜は僕の部屋で一緒に寝よう。みんな、おやすみ。(朋則の肩を押しながら上手へ去る。)

真木
 さあ、就寝。就寝。

真木は仁と英太を促して、部屋へ。
杉野、さやかを助け起こし、部屋へつれていこうとして、真理の前をとおる。


真理 いったい、何なの。ここは。やってられないよ。

杉野 寝ようね。真理ちゃん。

真理 さやか、あんた何がそんなにつらいのさ。(首を振るだけ)

真理 あんたも、親に捨てられたの。

杉野
 今夜はもう、やめよう。みんな疲れてるよ。ねっ。

真理 ああやだ。ここは、いじめられっ子と、捨てられた子のたまり場なんだ。

杉野 真理ちゃん。

暗転

  

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もがれた翼 パートY
〜子どもたちと弁護士が
作るお芝居
この物語はフィクションです。
でも本当に
フィクションでしょうか。

児童福祉施設に送られた
子どもたち
ある日、事件が起きて、、、、
家庭で受けていた
虐待の事実が明らかになる
親に愛された経験がない
この子らを
責められるだろうか
私は何のために生まれてきたの!
私は誰かに愛されるだけの
価値がないの!
誰か、私を愛して

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国立市市民芸術小ホールにて
上演 (4月22日)


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