子どもの視点からの少年法論議を求める請願署名を  

すすめる会  N E W S
NO.14(2000年1月26日)
国会緊迫! 法務委に市民の声を!


予算審議中にもかかわらず法務委員会は法務省の圧力のもとで少年法「改正」法案の審議を今週中にも始めようとしています。各団体、個人の皆様も、署名のとりくみと合わせ、法務委員あて意見をよせて下さい。下記の文は、すすめる会ニュース号外として衆参の全法務委員にFAXしたものです。

通常国会が1月20日に招集されました。昨年1月に署名運動が本格的に始まって約1年、法案が国会に提出されてから約10ケ月。この間に署名の取り組みは進み、少年非行の問題を多角的に冷静に考えていこう、という雰囲気は少しずつ出来てきました。このことに確信をもって運動を広げていきましょう。京都伏見の小学生殺害事件の加害者が成人であろうと少年であろうと、感情的な議論は何の役にも立たないことを積極的に訴えていくのも大切と思います。

国会では、大きな課題として予算案の審議があります。当面は衆議院の議席削減問題で与野党の対立が続いていますが、いずれ予算案の審議が始まることでしょう。解散がなければ3月ころまで予算案審議が続くと言われます。それまでに各委員会、特に法務委員会が法案審議をどの程度やるのか、法務委員会の第一課題となった少年法「改正」法案の審議をいつ開始するのかハッキリしませんが、いつ始まってもいいように備えなければなりません。

本格的国会審議の段階に入って何より重要なことは、法案の問題点や社会の議論や関心を国会議員に届けて審議に反映させることです。正念場をひかえて新たな諸団体も含めて署名も広がっています。日弁連でも議員あての働きかけをしていますが、私たちとしても署名の取り組みとあわせ法務委員(ニュース12号参照)をはじめとする地元選出議員への働きかけなどを工夫しましょう。

マスコミの動向も重要です。13号でお知らせした1月8日放映NHKの地球法廷「自由か規律か」で、学校体罰と少年非行が取り上げられました。少年法「改正」そのものについては詳しくはふれませんでしたが、厳罰化について賛否の意見を紹介し、解説者として「悔いの残らない論議が必要です」と閉めくくりました。概ね冷静な紹介でしたが「非行は増加している」というような粗雑な解説もあり対策が必要です。また、1月10日の東京調布での街頭宣伝活動や福岡、三重などでの集会等についてもローカル面では取材に来て新聞記事になっています。マスコミにもっと緻密に取り上げてもらうよう働きかける必要があります。

ポ ス タ ー ・ チ ラ シ が で き ま し た 。               
ポスターはカラーA3版のきれいなもので好評です。事務所・個人宅にもぜひ貼って活用して下さい。
チラシは同じものを白黒A4版にしたもの。(事務局に連絡いただければ無料でお送りします。)



ミニ特集 
改正案は被害者支援になりません 
少年法より被害者支援の充実を
 


改 正 法 案 で は 

「改正」法案では被害者支援としては「審判結果の告知」を規定するだけです。これは警察や検察庁が自分の段階の処理結果を被害者に告知することを運用で(法律でなく)既に決めて実施していることにそろえたものです。家庭裁判所については審判非公開の関係があるので法律で規定しようというものです。結果の告知自体は意味があることは確かですが、被害者の求めるもののほんの一部にすぎません。

検察官の出席」が被害者支援にも役立つ、という説明がされることがあります。その趣旨が、被害者の怒りを代弁してくれる、というのであれば、検察官の役割についての誤解があります。日本の検察官は国家秩序の代弁者にすぎません。仮に被害者の怒りも代弁してくれたとしても、正しい事実認定を前提としない限り、被害者の願いは果たされないでしょう。


犯 罪 被 害 者 支 援 の 運 動 
日本では性暴力被害者についての支援運動は比較的早くから取り組まれましたが、一般犯罪の被害者については経済的支援として1985年に犯罪被害者等給付金支給法ができたものの、極めて不十分でした。心理的支援として1992年に東京医科歯科大に犯罪被害者相談室ができて活動を始めました。法的支援の一環として警察も1997年ころから通知制度を始めました。総合的な支援をめざして全国犯罪被害者ネットワークが1998年に発足し、1999年5月に「犯罪被害者の権利宣言」を発表しました。各地で支援センターができ、社会的支援も含んだ活動を始めています。
被害者自身の団体としては「少年犯罪被害当事者の会」や地下鉄サリン被害者の団体等が活動しているほか、最近「犯罪被害者の会」が発足しました。
なお政府レベルでの総合的な支援立法の動きはありません。刑事手続に関して法務省が刑事訴訟法等の改正を準備しています(法制審議会が、性犯罪の告訴期間の撤廃や、法廷で証人尋問を受ける時に被告人と同席しないで別室で証言する方法の導入などを検討しています)。


弁 護 士 会 も 支 援 に 取 り 組 ん で い ま す

日弁連は昨年10月の理事会で、「犯罪被害者の被害回復及び社会復帰」を目的とした「犯罪被害者基本法」要綱を採択しました。(全文は当会のホームページを参照して下さい

国や自治体に求める施策は次のとおりです。
  @支援組織や医療・カウンセリング・法律等の専門家の支援を受けるための制度。
  A被害回復として賠償や補償などを受けられるような制度。
  B刑事手続への関与として手続の説明、記録閲覧謄写、証言の機会等の制度。
  C捜査司法関係者やマスコミによるプライバシー侵害からの保護の制度。
  D被害の実情調査、捜査司法関係者への研修、マスコミや市民への教育と啓蒙。
 

この要綱にもとづく立法を実現するために、日弁連ではそれまでの犯罪被害回復制度等検討協議会を発展させ、常設委員会として犯罪被害者対策委員会を今年1月に発足させました。

全国各県の弁護士会では、すでに具体的な支援活動のためのセンターをつくる等して取り組みを始めており、すでに6の都府県で常設の相談窓口が設置されています。各地の行政や警察、市民団体による支援活動に参加している弁護士会もあります。岡山弁護士会では弁護士による具体的な支援活動に必要な弁護士費用を援助するシステムをつくりました。なお九州弁護士会連合会では昨年10月にシンポジウム「犯罪被害者の救済における弁護士の役割」の論議をふまえて「犯罪被害者支援宣言」を採択し、九州各県の弁護士会に支援センターを設立する方針を確認しました。

なお日弁連の要綱は加害者が成人・少年双方の場合を含みますが、少年の場合Bの手続(少年審判手続)への関与については少年法の理念との関係があるので、特則を予定しています。現在日弁連の子どもの権利委員会を中心に記録閲覧謄写等を盛り込んだ特則を検討中です。


弁護士会の子どもの人権活動と被害者支援  弁護士 平湯 真人

マスコミ等の議論では、少年事件の弁護(付添)活動が被害者の立場と相いれない、とか、少年事件の弁護(付添)活動をしている弁護士は被害者の立場がわかっていない等というような表現を見かけます。しかし、少年非行を含めて子どもの人権を守る活動と被害者支援とは密接につながっており、これまで子どもの権利委員会等に所属する弁護士の多くは、同時に被害者支援をめざしたの活動もしてきたのです。

まず被害者が子どもである場合の家庭や施設における虐待ケースの取り組みです。児童福祉法による救済や刑事告訴、民事損害賠償訴訟などに取り組みました。性的虐待等の場合には捜査による2次被害から守る活動(取調べの付添い等)もやってきました。これらを通じて被害者の心の傷のケアの重要性等を実感してきました。

子どもが学校で教師による人権侵害を受けて傷つくケースも多く体験しました。いじめ等子どもが加害者になる場合のケースも、加害者の立場に立ったり被害者の立場に立ったりしながら、加害者に被害者の苦しみを理解させる努力をしてきました。

子どもが加害者として犯罪をおかした場合、つまり少年事件の場合に、少年の付添人となった時の姿勢として、加害者に被害者の苦しみを理解させる努力をすることは同じです。そのことが少年の更生のためにも不可欠だ、と考えてきたからです。この点で一部に誤解がある(諸澤英道「被害者支援を創る」8頁)のは残念です。ただ少年事件の場合に審判までに弁償(示談)を成立させたい、という付添人としての課題が出てくることがあります。この点については、昨年11月の日弁連子どもの権利委員会主催の付添人経験交流集会で「被害者を示談交渉の相手方という見方で接し、その苦しみを弁護士自身が充分理解しようという姿勢が弱かったのではないか」という反省も出ました。

さらに付添人活動経験のある弁護士が、少年非行の被害者代理人として加害少年に対する民事裁判等に取り組むケースもあります。そのような立場にあっても、どうしたら加害少年が自己の行為をみつめ反省できるようになるか努力しています。

ただ、これまで弁護士として(子どもの人権活動にたずさわってきた弁護士も含めて)被害者支援が不十分だったことは率直に反省すべきです。今後一層の努力が実践と研鑽が必要だと思います。


★海外ニュース   バルガー事件と公開裁判

イギリスのバルガー事件(10才の少年2名が幼児を殺害して無期懲役の判決を受けた事件)について、ヨーロッパ人権裁判所が昨年12月16日に、イギリスの判決にはヨーロッパ人権条約違反がある、との判決をしました。この事件は、「イギリスでは10才の少年(判決時は11才)でも無期懲役になる」としばしば引用されているケースです。ヨーロッパ人権裁判所の判決は、無期懲役の仮釈放年数の決定方法についての判断もありますが、公開裁判についての判断(公正な裁判を受ける権利を侵害する)を紹介します。(詳しくは当会のホームページを参照してください

「この事件は−−−公開制など成人の権利を保障するものと一般に考えられている手続が、子どもの理解と参加を増進するために、子どもに関しては廃止すべきであるかどうかを検討せざるを得なかった最初のケースであった。−−−高いレベルでのメディアや公共の関心を惹く重大な犯罪で起訴された子どもに関して、できる限り子どもの威嚇感や圧迫感を減らすために非公開で裁判を行ない、あるいは、適切な場合において選ばれた出席者だけに限定しかつ裁判所の報告を提供することが必要である−−(中略)−−このような状況において、裁判所は、申立人が有能で経験豊かな弁護士による代理を受けたことが第6条第1項(公正な裁判を受ける権利)の目的にとって充分であったとは考えなかった」         
      


各地の動き・いろいろな動き−−−−−−−−−−−−−−−−
◆「



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