子どもの視点からの少年法論議を求める請願署名を  

すすめる会  N E W S
NO.12(1999年11月9日)
臨 時 国 会 始 ま る   改 正 案 の 審 議 入 り は な お 微 妙


 臨時国会は10月29日に開会、首相の施政方針演説、11月2日には野党党首の代表質問が行われたあと、衆議院法務委員会でも非公式の理事懇談会が行われる等して、今後の審議日程が話し合われています。今のところ、新規に国会提出となるオウム新法と民事再生法(個人の倒産手続を整備するもの)とが重点法案となっており、少年法「改正」法案については優先法案ではない、とされているようです。与党の公明党が野党時代(今年3月)に、政府原案反対の立場を公けにしており、現在までその立場を変更していないことも影響しているようです。ただしオウム新法と民事再生法法案の審議の進み方具合によっては、少年法 「改正」法案の審議入り(趣旨説明など)の可能性は否定できません。法案への疑問・反対が広がり深まっていることを、国会議員に理解してもらうことが法案阻止のカギであることは疑いありません。引き続き100万署名をすすめましょう。
 なお今国会での法務委員は4頁のとおりです。地元等からの働きかけに使って下さい。
                                                    
地 方 議 会 の 意 見 書 、 広 が る
 福岡県粕屋町議会は9月27日「少年法の理念を大切にし、少年法の改正にあたっては慎重な審議を求める意見書」を採択しました。この意見書は総合的な被害者救済制度の確立も求めています。

犯 罪 被 害 者 支 援 シ ス テ ム に 関 す る 動 き 
 日弁連は10月22日の理事会で「犯罪被害者基本法」要綱案を採択しました。「犯罪被害者の被害回復及び社会復帰」を目的とし、必要な施策として@医療、生活、法律などの支援A被害回復B刑事手続きへの関与等Cプライバシーの保護D教育と啓蒙を挙げています。日弁連内部で議論の多かったBについても通知・記録閲覧・証言等について規定しています。また「この法律に基づく施策を行うにあたっては、被疑者及び被告人の権利を不当に制限することがあってはならない。特に、少年事件に関しては、少年の保護、更生を目的とする少年法の理念を尊重しなければならない」としています。全国各地の弁護士会では、すでに具体的な支援活動のためのセンターをつくる等して取り組みを始めています。
 また各地の行政や警察、市民団体による支援活動も開始され、これに参加している弁護士会もあります。 他方で法務省は、刑事手続に関して被害者保護をすすめるためとして刑事訴訟法を改正しようとしており、具体的には11月中に法制審議会の部会の審議を開始し、短期間で答申を得て、1月からの通常国会に提出しようとしています。被疑者及び被告人の権利を不当に制限することにならないかどうか、という観点も含めて、各方面で議論が始まっています。
                                                                 
「青 少 年 基 本 法 」 へ の 国 会 の 動 き
 かねてニュースでお知らせしているように、7月の総務庁の答申を受けて、衆議院の青少年問題特別委員会では「青少年基本法」の検討を始め、8月5日の委員会、休会中の9月の2回の勉強会を行ってきました。「基本法」という発想には各党とも異論はないようですが、答申のような「子どもの問題行動は大人が甘やかしたから」という見方には同調しない意見もかなりあり、何を盛り込むべきか、については一致は難しいようです。石田委員長(公明)は9月中旬の時点で「今どこに力点をおくべきか議論しています。青少年が負うべき義務や責任、有害環境の規制や制限を重視することに力点をおくのか、青少年の権利や保護・育成に力点をおくのかというスタンスを今、勉強しているところで、まだ意見集約ができていません。」と言っています(市民福祉サポートセンターニュース)。
 今のところ特別委員会としては、基本法の論議とあわせ、有害環境規制の法律化、虐待防止立法制定などを検討していく予定です。同委員会が子どもの置かれた実情について正確な認識をもって青少年問題を論議できるよう、見守り、監視していく必要があります。
                                        
 政 府 「 児 童 虐 待 対 策 協 議 会 」 開 催 へ 
 これまで虐待問題については政府としては厚生省まかせのところがありましたが、このたび関係省庁(文部省、法務省、税務庁、警察庁、最高裁)と関係諸団体を広く含んだ協議会を11月中に開催することになりました。継続的なものになるかどうか、子どもの人権を守るため、運用だけでなく立法にもふみ込むか、が注目されます。

 最 高 裁 、 調 査 官 研 修 所 廃 止 へ
 最高裁は、家庭裁判所の調査官の研修をおこなう調査官研修所を廃止して、書記官など他の職種のための書記官研修所と統合して裁判所職員総合研修所をつくる方向を決め、予算要求をしています。家庭裁判所の調査官は、家庭裁判所の福祉的教育的機能(法的な判断でなくケースワークとして非行少年や離婚当事者に働きかける)を発揮するために戦後の制度改革で置かれた職種ですが、最高裁は1970年代から家庭裁判所を軽視し、調査官の独自性を薄めてきました。調査官が非行少年とじっくりかかわるよりも「一丁あがり」の処理を促進したため、少年法の理念が国民の目に見えなくなったのも、その結果です。また家庭裁判所の裁判官の力量が低下して「検察官がいないと正しい事実認定ができない」と言いだしたのもその結果です。調査官研修所の廃止は、そのような最高裁の少年法を粗末にする政策の象徴的な表れです。これに対しては、現場の調査官の中でも反対の声が上がっているほか、「検察官関与に反対し少年法を考える市民の会」などの市民団体からも強い批判が出ています。(「市民の会」の最高裁への申入書は「署名をすすめる会」のホームページに掲載されています。)                                                             
日 弁 連 「 改 正 」 法 案 反 対 決 議
 日弁連では今年1月の法制審議会答申に対して会長声明で反対して請願署名への協力を決め、3月に国会提出された法案にも反対してきましたが、10月開催の人権大会で、あらためて反対決議を採択し、政党への申し入れやマスコミへの広報を実施しています。  

市 民 団 体 に よ る 集 会 の 企 画 広 が る
東京 「検察官関与に反対し少年法を考える市民の会」主催
 11/24「少年法『改正』していいの?!」渋谷ウィメンズプラザ6時30分より
  連絡先 坪井法律事務所03ー3818ー4844  
福岡 「子どもと未来を考える市民の会」主催 
 11/23「少年法『改正』について考える市民集会パート2」
   福岡市動物園レクチャールーム2時より
 12/18「少年法『改正』などについての高校生ディベート(仮題)」
  ももちパレスホール2時より  連絡先 いずれも八尋法律事務所 092ー714ー3917
千葉 「千葉子どもサポートネット」主催
 12/12 連絡先 千葉子どもサポートネット事務局 043ー421ー3541
仙台 「少年非行を考えるみやぎ市民フォーラム」主催
 11/24ころ 連絡先 仙台中央法律事務所 022ー227ー2291
熊本 「全国青年司法書士協議会子どもの人権委員会」主催
  連絡先 小田司法書士事務所 096ー362ー4174
12/12ころ 坂上香さん講演「少年法と被害者救済(仮称)」
 
日 弁 連 シ ン ポ  12月3日6時より  弁護士会館17階
「改 正」法 案 の こ こ が 問 題 
 今回のシンポジウムは、事実認定が争われた具体的な事件をもとに、「改正」によって「適正な事実認定」が保障されず、少年の権利を害する結果となることを明らかにしようというものです。@江東区警察
官襲撃事件(殺意はない、と争った)とA「草加」事件(そもそも犯人でない、と争った)を素材にしま
す。(Aについては 次頁の記事参照) 

「 草 加 」 事 件 と 少 年 法 改 正 へ の 影 響 は ?
 最高裁は、10月19日に「草加」民事事件について、弁論を12月9日に行う旨決めました。最高裁は通常は高裁までの記録だけをもとに審理(書面審理)し、法廷で双方の意見をたたかわす手続=弁論手続をするのは、高裁判決とちがう判断をする場合等例外的な場合ですので、今回の決定も高裁判決を取り消す前提であろう、と報道されています。「草加」事件は1985年に埼玉県で起きた女子中学生殺害事件で5人の少年が家裁で有罪として少年院送致となり、高裁、最高裁への抗告も棄却され、再審にあたる「保護処分取消」も斥けられました。その後被害者遺族からの少年(現在成人)への民事損害賠償請求事件で浦和地裁が初めて無実を理由に請求を棄却しました。これを東京高裁がくつがえしたために、少年側が最高裁に上告していたものです。最大の争点は、被害少女の遺体に付いた唾液等の血液型の評価と自白の信用性です。東京高裁の判断については科学的な根拠を欠くと少年側弁護団が強く指摘しており、これが見直されて、少年たちの無罪が認められることは前進ですが、問題なのは、新聞等が「だから現在の少年審判では事実認定がうまくいかないので改正が必要だ」と解説していることです。
 「改正」案では裁判官の合議制や検察官関与を提案していますが、草加事件では最初の家裁審判が一人の裁判官だった外はみんな合議でした。検察官関与にしても「少年が争った事件で裁判官が判断者と検察官役を同時にはできないから」という理由で、つまり追及者の役割を期待されて登場しているのであって、裁判官がまちがってシロをクロと判断しないためのチェックを期待されているわけではありません。現実に草加事件でも検察官は少年側に有利な証拠の価値を低めようとして努力していたのです。この事件の判決が少年法「改正」に悪用されないように、今から正確な知識を持っておく必要があります。
       
作 品 紹 介 「 ハ ッ ピ ー バ ー ス デ ィ 」
 母親の心理的虐待で声を失った少女、身体障害の子との交流、いじめをうける級友、いじめる子どもの生活、少女の兄や母親の心の葛藤などを描いた「ハッピーバースディ 命かがやく瞬間」(青木和雄作・金の星社)とアニメ映画「ハッピーバースディ」(共同映画社)が話題を呼んでいます。PTA全国協議会や日本子どもを守る会など幅広い推薦を受けており、子ども劇場等でも上映しているようです。今、少年法「改正」でなく、何が必要か、を考えるためにも、多くの人たちと鑑賞して意見交換できれば、と思います。

事 務 局 よ り お 知 ら せ 

請 願 署 名 を す す め る 会 ネ ッ ト ワ ー ク 会 議
次回は 12月6日午後6時 霞が関弁護士会館5階507AB会議室です。                                                             
署 名 の た め の ポ ス タ ー ち ら し を 準 備 中 で す
これまで署名のための独自のポスター・ちらしがありませんでしたが、このたび法案になぜ反対なのか、「改正」の代わりに何が必要なのか、を短い文章で説明したものを事務局では準備しています。活用していくよう期待しています。

 法 務 委 員 名 簿
〔衆議院〕委員長 武部勤(自民/北海道)〔自民〕太田誠一(理事/福岡)・奥野誠亮(奈良)・加藤紘一(山形)・鯨岡兵輔(東京)・熊谷市雄(東北)・小林興起(東京)・笹川堯(群馬)・左藤恵(大阪)・菅義偉(神奈川)・杉浦正健(理事/愛知)・高市早苗(奈良)・藤井孝男(岐阜)・保岡興治(鹿児島)・山本有二(高知)・与謝野馨(理事/東京)・横内正明(理事/山梨)〔自由〕安倍基雄(東海)・権藤恒夫(福岡)・西村真悟(理事/大阪)〔公明〕上田勇(理事/南関東)・漆原良夫(北信越)〔民主〕枝野幸男(北関東)・北村哲男(理事/南関東)・坂上富男(北信越)・日野市朗(理事/東北)・福岡宗也(東海)〔共産〕木島日出夫(北信越)〔社民〕保坂展人(東京)〔さきがけ〕園田博之(熊本)
〔参議院〕委員長 風間ひさし(公明/比例・北海道)〔自民〕阿部正俊(山形)・岩崎純三(栃木)・岡野裕(比例・東京)・北岡秀二(理事/徳島)・塩崎恭久(理事/愛媛)・竹山裕(静岡)・服部三男雄(奈良)・吉川芳男(新潟)〔自由〕平野貞夫(理事/比例・高知)〔公明〕魚住裕一郎(理事・東京)〔民主〕江田五月(岡山)・小川敏夫(東京)・竹村泰子(理事・比例・北海道)・角田義一(群馬)〔共産〕橋本敦(比例・大阪)〔社民〕福島瑞穂(比例・東京)〔無所属〕斉藤十朗(議長/三重)・菅野久光(副議長/北海道)・中村敦夫(東京)・松田岩夫(岐阜)


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