少年法(現行) 少年法等の一部を改正する法律(案)
(緊急の場合の同行)
第十二条 家庭裁判所は、少年が保護のため緊急を要する状態にあつて、その福祉上必要であると認めるときは、前条第二項の規定にかかわらず、その少年に対して、同行状を発することができる。
第12条に次の1項を加える。


(新設)
2 裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(同行状の執行)
第十三条 同行状は、家庭裁判所調査官がこれを執行する。
2 家庭裁判所は、警察官、保護観察官又は裁判所書記官をして、同行状を執行させることができる。
第13条に次の1項を加える。


(新設)
3 裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(観護の措置)
第十七条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。
一 家庭裁判所調査官の観護に付すること。
二 少年鑑別所に送致すること。
2 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから二十四時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。
3 第一項第二号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、二週間を越えることはできない。特に継続の必要があるときは、一回に限り、決定をもつて、これを更新することができる。但し、検察官から再び送致を受けた事件が先に第一項第二号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することはできない。
第17条第3項を次のように改める。

3 第1項第2号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、2週間を超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、決定をもって、これを更新することができる。
4 裁判官が第四十三条第一項の請求により、第一項第一号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第一号の措置とみなす。 (新設)
4 前項ただし書の規定による更新は、一回を超えて行うことができない。ただし、第3条第1項第1号に掲げる少年に係る死刑・懲役又は禁断に当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密鋒に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行ったものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、更に4回を限度として、行うことができる。
5 裁判官が第四十三条第一項の請求により第一項第二号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第二号の措置とみなす。この場合には、第三項の期間は、家庭裁判所が事件の送致を受けた日から、これを起算する。
6 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することができる。但し、第一項第二号の措置については、収容の期間は、通じて四週間を越えることはできない

(新設)
5 第3項ただし書の規定にかかわらず、検察官から再び送致を受けた事件が先に第1項第2号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することができない。
第17条に次の2項を加える。
(新設)
9 第1項第2号の措置については、収容の期間は、通じて12週間を超えることができない。ただし、その収容の期間が通じて4週間を超えることとなる決定を行うときは、第4項ただし書に規定する事由がなければならない。
(新設)
10 裁判長は、急速を要する場合には、第1項及び第8項の処分をし、又は合議体の構成負にこれをさせることができる。
(少年鑑別所送致の場合の仮収容)
第十七条の二 家庭裁判所は、前条第一項第二号の措置をとつた場合において、直ちに少年鑑別所に収容することが著しく困難であると認める事情があるときは、決定をもつて、少年を仮に最寄の少年院又は拘置監(監獄法(明治四十一年法律第二十八号)第一条第三項の規定により代用されるものを含まない。)の特に区別した場所に収容することができる。但し、その期間は、収容したときから七十二時間を超えることはできない。
2 前項の規定による収容の期間は、これを前条第一項第二号の措置により少年鑑別所に収容した期間とみなし、同条第三項の期間は、少年院又は拘置監に収容した日から、これを起算する。
3 裁判官が第四十三条第一項の請求のあつた事件につき、第一項の収容をした場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その収容は、これを第一項の規定による収容とみなす。
(異議の申立て)
(新設)
第17条の2 少年、その法定代理人又は付添人は、前条第1項第2号又は第3項ただし書の決定に対して、保護事件の係属する家庭裁判所に異議の申立てをすることができる。ただし、付添人は、選任者である保護者の明示した意思に反して、異議の申立てをすることができない。

2 前項の異議の申立ては、蕃判に付すべき事由がないことを理由としてすることはできない。

3 第1項の異議の申立てについては、家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。この場合において、その決定には、原決定に関与した裁判官は、関与することができない。

4 第32条の3、第33条及び第34条の規定は、第1項の異議の申立てがあった場合について準用する。この場合において、第33条第2項中「取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送しなければならない」とあるのは、「取り消し、必要があるときは、更に裁判をしなければならない」と読み替えるものとする。

(特別抗告)
(新設)
第17条の3 第35条第1項の規定は、前条第3項の決定について準用する。この場合において、第35条第1項中「2週間」とあるのは、「5日」と読み替えるものとする。

2 前条第4項及び第32条の2の規定は、前項の規定による抗告があった場合について準用する。

(新設)
第17条の4
2  裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、又は合議体の構成負にこれをさせることができる。
(審判の方式)
第二十二条 審判は、懇切を旨として、なごやかに、これを行わなければならない。
2 審判は、これを公開しない。
第22条に次の1項を加える。

(新設)
3 審判の指揮は、裁判長が行う。

第22条の次に次の2条を加える。

(検察官の関与)
(新設)
第22条の2 家庭裁判所は、第3条第1項第1号に掲げる少年に係る死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件において、その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもって、審判に検察官を出席させることができる。

2 家庭裁判所は、前項の決定をするには、検察官の申出がある場合を除き、あらかじめ、検察官の意見を聴かなければならない。

3 家庭裁判所は、第1項の事件において、その罪が被害者の死亡の結果を含むものである場合で、検察官の申出があるときは、明らかにその必要がないと認める場合を除き、同項の決定をするものとする。

4 検察官は、第1項の決定があった事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、最高裁判所規則の定めるところにより、事件の記録及ぴ証拠物を閲覧し及び謄写し、審判の手続(事件を終局させる決定の告知を含む。)に立ち会い、少年及び証人その他の関係人に発問し、並びに意見を述べることができる。

(検察官が関与する場合の国選付添人)
(新設)
第22条の3 家庭裁判所は、前条第1項の決定をした場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人を付さなければならない。

2 前項の規定により家庭裁判所が付すべき付添人は、最高裁判所規則の定めるところにより、選任するものとする。

3 前項の規定により選任された付添人は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。
(決定の執行)
第二十六条 家庭裁判所は、第十七条第一項第二号、第十七条の二第一項、第十八条、第二十条及び第二十四条第一項の決定をしたときは、家庭裁判所調査官、裁判所書記官、法務事務官、法務教官、警察官、保護観察官又は児童福祉司をして、その決定を執行させることができる。
2 家庭裁判所は、第十七条第一項第二号、第十七条の二第一項、第十八条、第二十条及び第二十四条第一項の決定を執行するため必要があるときは、少年に対して、呼出状を発することができる。
3 家庭裁判所は、正当の理由がなく前項の呼出に応じない者に対して、同行状を発することができる。
4 家庭裁判所は、少年が保護のため緊急を要する状態にあつて、その福祉上必要であると認めるときは、前項の規定にかかわらず、その少年に対して、同行状を発することができる。
5 第十三条の規定は、前二項の同行状に、これを準用する。

(少年鑑別所収容の一時継続)
第二十六条の二 家庭裁判所は、第十七条第一項第二号の措置がとられている事件について、第十八条から第二十条まで、第二十三条第二項又は第二十四条第一項の決定をする場合において、必要と認めるときは、決定をもつて、少年を引き続き相当期間少年鑑別所に収容することができる。但し、その期間は、七日を超えることはできない。

(同行状の執行の場合の仮収容)
第二十六条の三 第二十四条第一項第三号の決定を受けた少年に対して第二十六条第三項又は第四項の同行状を執行する場合において、必要があるときは、その少年を仮に最寄の少年鑑別所に収容することができる。
第26条第1項及び第2項中「第17条の2第1項」を「第17条の4第1項」に改め、同条に次の1項を加える。

(新設)
6 裁判長は、急速を要する場合には、第1項及び第4項の処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
3 第十八条第一項及び第十九条第二項の規定は、家庭裁判所が、第一項の規定により、保護処分を取り消した場合に準用する。
4 家庭裁判所は、第一項の規定により、少年院に収容中の者の保護処分を取り消した場合において、必要があると認めるときは、決定をもつて、その者を引き続き少年院に収容することができる。但し、その期間は、三日を超えることはできない。
(競合する処分の調整)
第二十七条 保護処分の継続中、本人に対して有罪判決が確定したときは、保護処分をした家庭裁判所は、相当と認めるときは、決定をもつて、その保護処分を取り消すことができる。
2 保護処分の継続中、本人に対して新たな保護処分がなされたときは、新たな保護処分をした家庭裁判所は、前の保護処分をした家庭裁判所の意見を聞いて、決定をもつて、いずれかの保護処分を取消すことができる。

(保護処分の取消)
第二十七条の二 保護処分の継続中、本人に対し審判権がなかつたこと、又は十四歳に満たない少年について、都道府県知事若しくは児童相談所長から送致の手続がなかつたにもかかわらず、保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、保護処分をした家庭裁判所は、決定をもつて、その保護処分を取り消さなければならない。
2 保護観察所、児童自立支援施設、児童養護施設又は少年院の長は、保護処分の継続中の者について、前項の事由があることを疑うに足りる資料を発見したときは、保護処分をした家庭裁判所に、その旨の通知をしなければならない。
第27条2
(新設)
2 保護処分が終了した後においても、審判に付すべき事由の存在が認められないにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、前項と同様とする。ただし、本人が死亡した場合は、この限りでない。

(新設)
6 前3項に定めるもののほか、第1項及び第2項の規定による保護処分の取消しの事件の手続は、その性質に反しない限り、保護事件の例による。

(証人等の費用)
第三十条 証人、鑑定人、翻訳人及び通訳人に支給する旅費、日当、宿泊料その他の費用の額については、刑事訴訟費用に関する法令の規定を準用する。
2 参考人は、旅費、日当、宿泊料を請求することができる。
3 参考人に支給する費用は、これを証人に支給する費用とみなして、第一項の規定を適用する。
第30条に次の1項を加える。
(新設)
4 第22条の3第3項の規定により付添人に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の額については、刑事訴訟法第38条第2項の規定により弁護人に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の例による。
(費用の徴収)
第三十一条 家庭裁判所は、少年又はこれを扶養する義務のある者から証人、鑑定人、通訳人、翻訳人、参考人及び補導を委託された者に支給した旅費、日当、宿泊料その他の費用並びに少年鑑別所及び少年院において生じた費用の全部又は一部を徴収することができる。
第31条第1項中「参考人」の下に「、第22条の3第2項の規定により選任された付添人」を加える。

第2章第2節中第31条の次に次の1条を加える。

(被害者等に対する通知)
(新設)
第31条の2 家庭裁判所は、第3条第1項第1号又は第2号に掲げる少年に係る事件を終局させる決定をした場合において、最高裁判所規則の定めるところにより当該事件の被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)から申出があるときは、その申出をした者に対し、次に掲げる事項を通知するものとする。ただし、その通知をすることが少年の健全な育成を妨げるおそれがあり相当でないと認められるものについては、この限りでない。

一 少年及びその法定代理人の氏名及び住居

二 決定の年月日、主文及び理由の要旨

2 前項の申出は、同項に規定する決定がされた日から3年を経過したときは、することができない。
第32条
(新設)
2 検察官は、第22条の2第1項の決定がされた場合においては、保護処分に付さない決定又は保護処分の決定に対し、同項の決定があった事件の非行事実の認定に関し、決定に影響を及ぼす法令の違反又は重大な事実の誤認があることを理由とするときに限り、2週間以内に、抗告をすることができる。
(抗告)
第三十二条 保護処分の決定に対しては、決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認又は処分の著しい不当を理由とするときに限り、少年、その法定代理人又は附添人から、二週間以内に、抗告をすることができる。但し、附添人は、選任者である保護者の明示した意思に反して、抗告をすることはできない。
第32条の次に次の4条を加える。

(抗告裁判所の調査の範囲)
(新設)
第32条の2 抗告裁判所は、抗告の趣意に含まれている事項に限り、調査をするものとする。
(新設)
2 抗告裁判所は、抗告の趣意に含まれていない事項であっても、抗告の理由となる事由に関しては、職権で調査をすることができる。

(抗告裁判所の事実の取調べ)
(新設)
第32条の3 抗告裁判所は、決定をするについて必要があるときは、事実の取調ベをすることができる。
(新設)
2 前項の取調べは、合議体の構成員にさせ、又は家庭裁判所の裁判官に嘱託することができる。

(検察官から抗告がされた場合の国選付添人)
(新設)
第32条の4 抗告裁判所は、検察官から抗告がされた場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人を付さなければならない。

(準用)
(新設)
第32条の5 前3条に定めるもののほか、抗告審の審理については、その性質に反しない限り、家庭裁判所の審判に関する規定を準用する。
第三十三条 抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、抗告を棄却しなければならない。
2 抗告が理由のあるときは、原決定を取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送しなければならない。
第33条中「ときは」の下に「、決定をもって」を加える。
(再抗告)
第三十五条 抗告を棄却した決定に対しては、憲法に違反し、若しくは憲法の解釈に誤があること、又は最高裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をしたことを理由とする場合に限り、少年、その法定代理人又は附添人から、最高裁判所に対し、二週間以内に、特に抗告をすることができる。但し、附添人は、選任者である保護者の明示した意思に反して、抗告をすることはできない。
2 第三十四条の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第35条第1項中「抗告を棄却した」を「抗告裁判所のした第33条の」に、「誤」を「誤り」に、「附添人から」を「付添人から」に改め、同項ただし書中「但し」を「ただし」に、「附添人」を「付添人」に、「ことはできない」を「ことができない」に改め、同条第2項中「第34条」を「第32条の2から前条まで」に、「前項」を「前2項」に改め、同項に後段として次のように加える。

この場合において、第33条第2項中「取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送しなければならない」とあるのは、「取り消さなければならない。この場合には、家庭裁判所の決定を取り消して、事件を家庭裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送することができる」と読み替えるものとする。

第35条第2項を同条第3項とし、同条第1項の次に次の1項を加える。
(新設)
2 検察官は、第22条の2第1項(第32条の5において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の決定がされた場合においては、抗告裁判所のした第33条の決定に対し、同項の決定があった事件の非行事実の認定に関する判断について、前項の事由を理由とするときに限り、最高裁判所に対し、2週間以内に、特に抗告をすることができる。


(検察官へ送致後の取扱)
第四十五条 家庭裁判所が、第二十条の規定によつて事件を検察官に送致したときは、次の例による。

四 第十七条第一項第二号の措置は、これを勾留みなし、その期間は、検察官が事件の送致を受けた日から、これを起算する。この場合において、その事件が先に勾留状の発せられた事件であるときは、この期間は、これを延長することはできない。

六 弁護士である附添人は、これを弁護人とみなす。

第45条の前の見出し中「取扱」を「取扱い」に改め、同条第4号中「勾留と」を「裁判官のした勾留と」に、「ことはできない」を「ことができない」に改め、同条第6号中「弁護士である附添人」を「少年又は保護者が選任した弁護士である付添人」に改める。
(保護処分の効力)
第四十六条 罪を犯した少年に対して第二十四条第一項の保護処分がなされたときは、審判を経た事件について、刑事訴追をし、又は家庭裁判所の審判に付することはできない。但し、第二十七条の二の規定により、保護処分を取り消した事件については、この限りでない。
第46条の見出し中「保護処分」を「保護処分等」に改め、同条ただし書を削り、同条に次の2項を加える。
(保護処分の効力)
(新設)
2 第22条の2第1項の決定がされた場合において、同項の決定があった事件につき、審判に付すべき事由の存在が認められないこと又は保護処分に付する必要がないことを理由とした保護処分に付さない旨の決定が確定したときは、その事件についても、前項と同様とする。
(新設)
3 第1項の規定は、第27条の2第1項の規定による保護処分の取消しの決定が確定した事件については、適用しない。ただし、当該事件にっき同条第6項の規定によりその例によることとされる第22条の2第1項の決定がされた場合であって、その取消しの理由が審判に付すべき事由の存在が認められないことであるときは、この限りでない。