11・17委員会 傍聴メモ
この日は参考人質疑で、第1班は前田雅英(都立大学教授)・村井敏邦(龍谷大学教授)・山田由起子(弁護士)、第2班は武るり子(少年犯罪被害当事者の会)・山口由美子(西鉄バスジャック事件被害者)・千葉一美(弁護士)の各氏。
前田氏は、少年犯罪は戦後(検挙率を加味すれば)一貫して増加している、保護主義は加害者のみに着目したもので被害者や社会正義を考えていない、逆送率だけでなく少年院収容率も低すぎる、14歳に下げれば、これら全体を上げることに役立つ、今少年は何をやっても許されるという意識が蔓延している、再犯防止にとっての有効性ということで判断するのは誤り(再犯防止は犯罪予防のほんの一部にすぎない)、アメリカの犯罪率が一貫して増えているというのはミスリーディングだ、等と意見を述べた。おおむね9月9日の日経新聞、10月出版の「少年犯罪−統計から見たその実像」東京大学出版会で展開されているとおり。
村井氏は、前田氏の検挙率をかけあわせることの当否については議論を要すること、また少年法が非行の増加、凶悪化を背景として制定されたこと、質的変化論も印象論であって実証的な根拠がないことを、厳罰化は短期的解決にはなるかもしれないが長期的には社会問題を深刻化させ、取り返しのつかない事態を招くこと、等の意見を述べた。
山田氏は、少年事件の付添人としての経験、被害者の代理人としての経験、アメリカに留学しての見聞(厳罰化の失敗や修復的司法の実践など)を踏まえて、法案の問題点を指摘し、厳罰化で規範意識は育たない、「厳罰化よりも修復的司法を」と意見を締めくくった。(なお意見の詳細については同氏の原稿を転載さしていただいたので参照していただきたい。)議員は山田氏の修復的司法にかなり多くの関心を寄せ、日本における具体化について質問をした。
武氏は、同氏の子息が集団暴行によって死亡させられるに至った経緯、その後の警察や家裁の対応を、加害者の対応について触れ、「少年犯罪被害当事者の会」としての改正要望事項(生命にかかわる事件と他の事件とを区別すること、被害者が手続に参加すること等)を説明し、法案について不満はあるが貴重な一歩と評価している、と意見を述べた。特に死亡直後に警察から悔やみの言葉もなく「法治国家だから仇討ちは考えてはいけない、加害者にも人権がある」と言われ、家裁でも「ここは事実関係をどうこうとか親の心情を聴くところではない」と言われたこと語り、少年法は罪がなかったような手続、被害者のことは忘れてしまえばいい、というような手続である、と述べた。
なお同氏は調査官の幹部から「加害者の人権ということで最近ちゃんとした調査ができず机の上のワークしかできなくなった」と聞かされた、と述べた。
山口氏は、バスの中で加害者少年が包丁を持った時の印象、そのあとの被害体験と心情について述べ、加害少年をあそこまで追い込んだ大人の責任を重視していること、少年には本当に反省して更生してほしいと望んでいること、このように考えるのは自分の娘も不登校で親子して苦しんだ経験があるからだ、と述べた。(同氏は以前に市民集会に出席されて体験を話されたことがある、当ホームページに登載されているので、参照していただきたい。)
千葉氏は主に少年事件の付添人としての体験から、法案の問題を指摘した。まず被害者への配慮規定は前進であること、ただし被害者の審判出席ついては非公開を維持する必要があり、矯正現場で被害者の視点を持ち込む必要があること、をこう述べた。また、厳罰化の前提の「保護処分が甘く厳罰は厳しい」という見方は違う、16歳まで少年院というのではフォローにならない、原則逆送についても家裁の判断への不当評価であり裁判上が怒らないのが不思議である、事実関係をはっきりさせるのは被害者のためにも必要だが、証拠制限などのない現在の手続の中に検察官を入れるのはもってのほかで、憲法の「公平な裁判」といえないのではないか、家裁に実質的な対審構造を持った刑事裁判部を設けることもひとつの方法ではないか、正しい事実認定のために杜撰な捜査は許されない、と述べた。 (文責 平湯真人)
その他スケジュールやご不明な点は請願署名をすすめる会までお問い合わせ下さい。 東日本事務局 TEL.03-5770-6164 FAX03-5770-6165 Eメールsiten@bh.mbn.or.jp |