子どもの視点からの少年法論議を求める請願署名を すすめる会 N E W S
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「改正」法案ついに廃案に 65万署名と大きな取り組みの力で 6月2日衆議院は解散され、遂に「改正」法案を廃案に持ち込むことができました。19号(4・26付)以来も国会の動きが続き、この間に5・19付で一部の方に国会情勢をお伝えしました(ホームページに掲載)が、与党は法案審議の形をとりつつ、実質は年齢引き下げなど抜本的厳罰化法案を準備して、そのために選挙向けのプロパガンダに国会を利用しようという方針で終盤国会に臨みました。 5月連休明けに衆議院の本会議と法務委員会(1回)を開き、委員会内に小委員会を設置して2回(16日と18日)の討論(実態は各党が少年犯罪防止方策を言いっぱなし)を経て、23日の法務委員会で「少年非行に関する決議」を採択(自由党のみ反対のもよう)し、この時点で廃案は確実となりました。終盤国会の時期に連続した少年非行報道、厳罰化世論の嵐の中で、最終的に廃案に持ち込めたことの意義は大きく、皆さまと健闘を喜び合いたいと思います。 今国会をふりかえって 昨年の通常国会が始まった3月に「改正」法案は衆議院に上程されましたが、ガイドラインや盗聴法案のため審議に入れず、秋の臨時国会もオウム法案等のために審議に入れず、今年1月からの通常国会が山場となりました。このために日弁連や「市民の会」など「改正」阻止に結集した諸団体、個人は、さまざまな他の運動の成果とも連動させながら、国会とマスコミに向けて密度濃い取り組みを行ないました。 1月には草加事件の最高裁判決を活用し、検察官の証拠隠蔽を指摘しつつ、「この法案では事実認定の適正化に役立たない、えん罪防止、事実認定の適正化のためには、被疑者弁護人など捜査手続の適正化こそが重要である」と訴え、議員会館内集会などを重ねました。 被害者の権利擁護のためには、成人の刑事手続における被害者の関与のみを盛り込んだ政府の刑事訴訟法改正案等にとどまらず、広範囲の権利救済の必要性をうたった日弁連提言(民主党の犯罪被害者基本法案となって結実)や少年審判手続における被害者の関与を盛り込んだ日弁連提言などを活用し、「この法案では少年犯罪被害者の権利救済にもならない」と訴えました。 また子どもが社会のさまざまな場で人権を無視されている状況を指摘し、家裁や関係機関の充実、のびのびとした教育、親の子育て支援と虐待防止施策などを訴えました。そのひとつの反映として、虐待防止法が終盤国会で成立しました。これは内容的には現在の児童福祉法のもとで実施されていることの追認ですが、社会の関心が子どもの状況全般に広がりつつあることの反映と言えましょう。 今年に入って、犯罪者の社会復帰をめざす治療共同体をすすめている、アメリカのNGOであるアミティ関係者を日本に招聘する運動が、アネネスティ日本支部の関係者などを中心に開始され、4月はじめ国内8都市で後援会やワークショップが行なわれました。議員会館内の集会も持たれ、厳罰化を考える議員にも一定の影響を与えました。 そして5月に入って愛知の恐喝や殺人、佐賀のバスジャックなど、次々に報道される中で、テレビ週刊誌を中心に厳罰化のムードがあおり立てられましたが、新聞各紙を中心に比較的冷静な論調も保たれ、野党議員も「選挙で落とすぞ」と電話などで脅迫されながら、「拙速審議反対」との見識を維持して努力してくれて、廃案まで持ち込むことができました。 残念ながら委員会決議は採択。 委員会決議については、自民党が次の国会での法案審議のためのレールにしようと目論見んだもので、残念ながら決議は阻止できませんでしたが、自民党の思いのとおりのものにはなりませんでした。 当初の与党の決議案(公明党の意向で自民党案を薄めたもの)には「現在付託されている少年法改正などにより、実体的真実を解明し」とか「少年の規範意識を醸成し、年齢問題を含め、少年の処遇体系全体を早急に検討すること」などの文言があり、野党間 あるいは与野党間の折衝で、最終的に「現在付託されている少年法改正などにより」は削除されたものの、「年齢問題」は削除できなかったものです。野党としても決議そのものに反対しにくく、また「年齢問題の検討」には18歳選挙権や18歳成人の問題も含めて議論する趣旨ならばやむを得ない、という判断もあったようですが、そもそも基本的には、厳罰化世論に対する私たちの力がまだ十分にはできておらず、それが野党にも反映している、という現在の力関係の結果と見るべきでしょう。 子どもの人権を守る本格的対決に向けて 私たちとしては、これから予想される抜本的厳罰化法案に向けて、より一層子どもの視点から、問題の解決に迫る姿勢と努力を維持したい、と思います。すでに法務省は、自民党案にそう形での立法に向けて内部作業を開始し、また国会議員への根回しを始めています。この度の廃案に追い込むことのできた私たちの力に確信をもって、これを強化していきましょう。 「少年非行対策に関する決議」(5・23衆議院法務委員会決議) 少年による深刻な凶悪事件が後を絶たず、憂慮すべき状況にあって、次代を担う少年の責任感と自立心が醸成され、その健全育成が図られるとともに、国民が安心して暮らせる社会を創り出すことが、喫緊の国民的課題である。 そのためには、教育、文化、児童福祉、精神的医療、ケアなど各般にわたる課題について、少年の非行防止に向けた総合的施策を策定し、これを国や自治体はもとより、学校・地域・家庭など国民一体となって推進すべきはもとよりであるが、現行の少年に関する法体系についても、立法措置も含む広い視野から真剣な検討を加える必要がある。 1 少年の健全育成という少年法の根本理念は堅持しつつ、現行少年審判の在り方について、実体的真実を解明し、事実認定を適正に行い、少年に正確な事実認識を与えて 自覚と自省を促すものにすること 2 審判手続において、犯罪被害者の立場を尊重する制度を確立するとともに、被害者 救済のための抜本的措置を検討すること。 3 少年の処遇体系については、少年の規範意識を醸成し、自己の責任を正しく理解さ せ、その健全育成を図る見地から、年齢問題、少年に関する処遇の在り方等を含め幅 広く早急に検討すること。
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