改正は国際的な期待を裏切るものである

弁護士 津田玄児
子どもの権利条約ニュースレター第43号・1999年4月15日より転載

 政府の法案の第一の問題点は、これまで少年が心を開いて発言することを不可能にするものとして排除されていた、追及者としての検察官を手続きに登場させ、以下に指摘するように節目節目での活動・権限を確保し、手続き全体に睨みを効かすように仕組みを変えることを提起していることである。
1.裁判所が必要だと考えれば、殆どすべての事件に登場することができる。
2.人が死亡した事件では、自ら求めて登場することができる。
3.裁判の結果について、やり直しを求めることができる。
4.登場する場合だけ、弁護士をつけ、蒸し返しを許さない(それ以外では許される)という「恩典」を与えている。

 第二の問題点は、その仕組みの変更に伴い、変更手続きに時間が必要だとして、4週間に制限されている少年鑑別所への収容を、一気に3倍の12週間に延長することを提起していることである。

 これに加えて検討中の自民党の案では、懲罰的対応を強化することが必要だとし、中学生を刑務所にいることさえ提起している。

 少年法は、非行を直視させ、心を開いて語らせることを通して、少年が立ち直ることを可能にするものとして構成され、大変な成果は挙げ、国際的にも高く評価されている。改正はそのしくみの根幹を取り崩し、子どもが立ち直る最後の砦を失わせるものである。

 国連子どもの権利委員会でも、懲罰的アプローチを求める動き、観護措置延長の動きなど、特別の懸案を引き起こしている領域だとして審査が行われた。そして立ち直りの最後の砦としての機能を一層強化するよう、条約や国際準則に従って見直すこと、中でも子どもを損なう身柄の拘束について代替手段の工夫など抜本的な改善を求める勧告がなされたのである(48項)。審査を司会したカーブ委員は、昨年12月来日して、この改正が勧告に反することを指摘し、「大変悲しい」とコメントした。改正は国際的な期待を裏切るものである。短期間のうちに子どもを損なう改正を止めてほしいという、50万に近い署名が集められている。改正は多くの国民の願いを裏切るものである。

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