少年法があぶない
団藤講演

論文

催し情報

活動記録

広場

すすめる会ニュースバックナンバー

図書のお知らせ

Q&A

少年法

少年審判規則


ポスター
公選法・民法・少年法3点セットで18歳引き下げする件に関する
弁護士有志の意見

少年法を政争の具にしないで下さい。
公選法・民法とセットの18歳への引き下げも慎重な検討が必要です


通常国会中から自民党が少年法年齢引き下げ(いわゆる逆送年齢、適用下限を引き下げる)案が出されましたが、その後野党から「少年法の上限を18歳未満にすることについては、公職選挙法と民法を改正して選挙権と成人を18歳にすることにセットであれば賛成する」という考え方が示されています。
私たちは、選挙という極めて政治的な場で、制度の趣旨も問題状況も異にする3つの問題が安易にセットされて論議されていることに強い危惧を覚えます。


1. まず18歳選挙権については、諸外国の例からみても、子どもの権利条約からいっても、我が国で目指すべき制度であることは異論はありません。

2. 次に18歳成人についても基本的には同様ですが、今直ちに実施できるかは疑問があります。18歳を成人として社会生活上の権利義務の主体たらしめるには、それまでに社会で生きていくために必要な準備教育を終了していなければならないはずです。我が国の教育制度や家庭での教育社会の教育がそのようにできているでしょうか。何よりも民法改正によって成人となるはずの現在の子どもたちに、何の意見も聞かずに大人だけで勝手にそのような法制度を導入しようとしているところに、まさに18、19歳の子どもたちを成人とみなしていない、すなわち一個の人格として尊重されているとは言いがたい現在の日本の大人社会の意識が反映していると言うべきでしょう。
18歳成人となれば、民法上の行為能力も認められることになります。親権の拘束も免れるという点で虐待された子どもの保護に資する、という面はあるでしょう。しかし今後18、19歳の成人が親の同意なく消費者金融から借りられることになれば、不十分な消費者教育の結果としてその年齢のサラ金被害の急増は目に見えています。
これらの課題をクリアするためには、まず子どもの人格人権を尊重する立場からの教育制度の抜本的改革を行うことが、18歳成人のための条件整備の課題となります。子どもたちには18歳成人制を熟知させたうえで、少なくとも高校入学と同時にその助走期間を開始するという位の余裕をもって、制度の導入は検討されるべきと思います(それまでには虐待された18、19歳の子どもの保護をむしろ強化すべきです)。

3. 現在まで社会生活上の権利義務の主体である教育がなされていないという上記2.の問題は少年法の対象年齢引き下げを考える場合にもいえます。社会的に成熟させられていないことが少年犯罪の一要因になっているからです。少年法対象年齢引き下げについて子どもの意見を聞かない問題も2.で述べたとおりです。 
そもそも、18歳選挙権・18歳成人制と、少年法適用年齢の一致は論理必然ではありません。それぞれの趣旨が違うからです。現に、それぞれの対象年齢が異なる法制をとっている国があります。また、子どもの権利条約と一体をなす少年司法運営に関する国連最低基準規則では、「この原理を若年成人まで拡大する努力をしなければならない」とあります。少年法対象年齢引き下げはこれと逆行しています。
何よりも日本において、18歳以上の少年の犯罪について、少年法の適用があるために適切な処遇が行えなかった、というような事情はあるのでしょうか。現行少年法は、諸外国に比べ、少年の更生ひいて社会の安全という点で概ね良好に機能していると言われています。(少年院における処遇・被害者の視点の充実など課題はまだありますが)。
同時に現行法は18歳以上の少年を死刑を含む刑事罰を科すこともできるのであって、2つの選択肢を使い分けることによって、柔軟な対応が可能です。この効果の実証もないまま、選択肢を狭める提言は無責任です。

4. 私たちは厳罰化のための少年法年齢引き下げについては、犯罪統計の客観的な分析を無視し少年犯罪の背景を無視した「凶悪化」イメージにもとづく感情論として危惧するとともに、成人年齢の引き下げについても丁寧慎重な議論を求めます。


2000年6月21日


その他スケジュールやご不明な点は請願署名をすすめる会までお問い合わせ下さい。
東日本事務局 TEL.03-5770-6164 FAX03-5770-6165 Eメール
siten@bh.mbn.or.jp