2000年10月31日

参議院議員      殿

全司法労働組合      
中央執行委員長 奥田 正

少年法改正案に関する要請書


 本日31日午後、衆議院法務委員会で少年法改正案が可決、本会議でも可決され参議院に送付されました。これまで私たちは、21世紀を担う子どもたちにとって大変重要な少年法を検討するにあたって、ひろく国民の意見を聴取するとともに、家庭裁判所や少年院などに実際に携わっている専門家、実務家をまじえた慎重な審議が必要であるとの主張をしてきました。子どもたちを取り巻く現状や非行に対しては、多くのみなさんが心をいため、原因の分析を含めた議論もようやく始まったばかりです。また、犯罪の被害にあわれた方々を社会全体でどのように支援していくかという試みも緒についたばかりだといえます。

 少年法をめぐる論議は、単なる法律論を超えて、社会全体のあり方や制度の問題を含めた国民的な論議をよんできているところです。こうした中で、短期間の審議によって、衆議院法務委員会において、刑事罰適用年齢を現在の16歳から14歳に引き下げること、一部の事件に対して機械的に検察官送致を行う制度を導入すること、検察官の関与を一部に導入することなど、「厳罰化」を柱とした少年法改正案が可決されたことは、誠に残念なことと言わなければなりません。法務委員会の各委員の方々の真剣な討議には敬意を表するものではありますが、現在の少年法がもつ、保護主義の理念が結果として他の先進諸国に類例のない少年犯罪の抑制効果をもたらしている現実や社会が真剣に一人ひとりの子どもたちに向き合い、更生に対する努力と機会を子どもたちに与えていくという少年法のしくみが十分に機能しているという現場の評価がなされないと、犯罪の被害にあわれた方々の支援のしくみをどのようにつくっていくかという議論もなく、不十分な議論ままで少年法改正を行うことは、悔いを千載に残す結果になるともいえます。

 少年法改正案は、参議院の法務委員会に議論の場を移すわけですが、参議院という良識の府において、これまでにもまして子どもたちの現状を把握したうえで、少年法改正案について一層慎重に議論をされることを望んでやみません。一人ひとりの議員の方々が、少年法の基本的な考え方や理念を十分に理解いただくとともに、21世紀を担う子どもたちに社会がどのように向き合っていくかを考えていただくように十分な審議を尽くされるよう期待します。

Home /論文 /すすめる会News / 催し情報 / 活動記録 / 図書  
その他スケジュールやご不明な点は請願署名をすすめる会までお問い合わせ下さい。
東日本事務局 TEL.03-5770-6164 FAX03-5770-6165 Eメール
siten@bh.mbn.or.jp