与党骨子(案)と現行法の比較
現行法 与党案 問題点(日弁連意見など)
1 犯罪捜査のやり方 大人の捜査と同じやり方。 そのまま 取り調べ状況を録画すること、弁護士をつけること、拘束場所を警察留置所以外の場所にすることなどが必要。
2 家裁に送致するのは何才までか
(少年法適用年齢の上限は何才か)
少年法適用の上限は20才なので、20才未満の犯罪については、検察官は捜査終了後すべて家裁に送致する。 検討中(18才に下げて、18・19才もすべて地裁に送致して刑事裁判を受けさせる案も検討している。なお野党内には選挙権年齢や成人年齢を18才に下げるのとセットなら少年法適用の上限を18才にさげてもよい、との考えもあるが、与党はセット提案をするつもりはなさそう。) 現行法でも18・19才で保護処分ではなく刑事処罰が適当と家裁が判断した場合には、刑事裁判を受けさせることが可能であり(7参照)、18才に引き下げると保護処分を選択することが不可能となる。
3 家裁審理における証拠チェック 大人の刑事裁判と異なり、警察での捜査結果はすべて証拠として採用される。 そのまま 大人の刑事裁判と同じように、伝聞(また聞き)証拠などをチェックできるようにすることが必要。
4 家裁の審理における検察官の立ち会い 一切認められていない。 死亡事件(殺人・傷害致死・強盗致死・強姦致死など。但し過失による事故は除く)の場合と刑の短期が懲役2年以上の事件(死亡事件のほか強盗・強姦など)の場合には、事実関係の認定に必要な場合と裁判官が判断した場合は、検察官は審理の席に出席できる。 3のような証拠のチェックのないまま、さらに検察官の追及を許すことは、子どもが真実の発言をやりにくくし、冤罪の危険を増やす。検察官が関与をすれば真実発見にプラスということはない(草加事件などの冤罪事件で証拠隠しをした)。
5 家裁の審理の間の身体拘束 少年鑑別所に4週間拘束する。(観護措置という)。 8週間拘束する(12週間にすることも検討中)。 長期の拘束は健康や学業にも影響する。拘束しなくても審理は可能。
6 家裁の審理における弁護士の付き添い 国選でつける制度がなく、私選でつくのは全少年事件の1%だけ。 4で検察官が立ち会う場合だけ(私選付添人がいない時は)国選をつける。 全部の事件について(私選付添人がいない時は)国選をつけるべき。
7 家裁の裁判の内容
(刑事処罰の位置づけ)裁判官の判断により、保護処分(少年院や保護観察など)・不処分のほか、刑事処罰が適当であると認めた時は、刑事処罰(刑務所での懲役刑)をうけさせるための検察官送致を選択する。但し検察官送致は16才以上のみ。
裁判官の判断により、保護処分(少年院や保護観察など)・不処分のほか、刑事処罰が適当であると認めた時は、刑事処罰(刑務所での懲役刑)をうけさせるための検察官送致を選択する。但し検察官送致は16才以上のみ。 検察官送致について16才以上という制限を14才以上とする。ただ16才未満の子どもは16才になるまで少年院に収容する。
また、死亡事件(殺人・傷害致死・強盗致死・強姦致死など。但し過失による事故は除く)の場合には、原則として検察官送致にしなければならないものとする。
少年犯罪については、結果が重大な犯罪であっても、原則的に刑事処罰を避けて教育的な処置である保護処分が望ましい。保護処分では駄目だという歴史的実証的な根拠もなしに原則と例外を逆にするのは問題。
また、14才・15才の子どもが刑事裁判の法廷できちんと発言するのは無理だし義務教育はどうするのか、という問題もある。16才になるまで少年院に収容させるとなれば、懲役刑であることとの関係が問題だし、少年院では2種類の子どもを収容することになって混乱する。
8 家裁の裁判に対する検察官の抗告 一切認めない。 抗告権ではなく、抗告受理申立権(申立を取り上げるかどうか高裁の自由な裁量できめる)を新設する。 抗告権も抗告受理申立権(実質的に抗告権と同じ)にも反対。少年事件についてはできるだけ早い時期に決着をつける必要がある。(大人の刑事事件では検察官が高裁に上訴できるが、これについてもアメリカなどでは認められていない。)
9 家裁の裁判に対する再審 直接の規定はないが、少年院にいる間だけ認めらている。(刑事裁判では刑務所出所後でも再審の申立ができる) 少年院を出たあとでも認める(保護処分取り消しの制度を新設)。 少年の権利保障のため必要。
10 被害者の保護 なし 家裁での意見陳述、裁判結果の通知、記録の閲覧謄写を認める。 与党案については賛成であり、そのほかに被害者と加害者の直接協議の制度も必要。また経済的な補償制度の拡充など総合的な救済制度が緊急に必要である。
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