少年法「改正」法案の参議院通過に対する緊急声明
2000年11月24日
本日ついに少年法「改正」法案が参議院法務委員会で可決された。民主党および自由党による5年後の見直し条項を採り入れて一部修正されたが、早晩、参議院本会議で可決され、再び衆議院でこの修正された案が丸飲みにされ本会期中に可決成立する見通しだといわれている。そもそも当初、衆議院では、非拘束名簿式比例代表制度導入に反対して野党が審議を拒否し、与党の思うままに審議が進み、途中から野党が審議に参加しても指摘された問題点に対する誠実な対応がなかった。参議院法務委員会は実質わずか6回にわたる審議をしたにすぎず、およそかみ合った議論はなく、与党側の委員の欠席がめだった。子どもの権利条約にいうような、子どもに関することについて子どもの意見を聞くための工夫も努力もなく、また、現行法のもとでこの50年間子どもたちの立ち直りに真摯に取り組んできた現場の人々の声にも耳をかさなかった。慎重な審議がされたとはとても言えない状態であり、立法機関として恥ずかしいかぎりだった。
少年法「改正」法案は、少年審判への検察官関与と検察官の「抗告受理申立権」および裁定合議制、観護期間の延長のほか、刑事処分適用年齢を16歳から14歳に引き下げ、16歳以上の少年による重大な事件は刑事処分が原則とされた。このようなもりだくさんな「厳罰化」は、50年にわたる少年法の成果を無視し、子どもの権利条約でも確認されている少年法の保護主義の理念や子どもの成長発達権の保障や最善の利益保護の原則を投げ捨てるに等しい暴挙と言わなければならない。
私たちが繰り返し述べてきたように、少年非行は社会の鏡であり、少年法のあり方は子どもの将来に大きく関わる。改正の必要性・妥当性について検証らしい検証がなされなかったのは、将来に大きな禍根を残すものと言わなければならない。
与党が当初あげていた犯罪抑止の目的は、国会での審議で、とても達成され得ないものであることが明らかにされて、改正の論拠は大幅に崩れた。そもそも「厳罰化」の発想は、結果の重大性だけに目を奪われた短絡的なものと言わなければならない。重大とされる少年非行の動機や背景は深く社会病理と結びついたものであることがまったく無視されている。子どもにとって刑罰による威嚇は、何の効果もないだけではなく、かえって有害だと言わなければならない。
第一番目にあげていた論拠を失ったにもかかわらず、与党は、規範意識を植え付けるためだと強弁した。保岡法務大臣は、これを後押しして、教育基本法・憲法の「改正」すらちらつかせた。これは、今回の少年法「改正」の目的が被害者の保護でもなければ、自らも苦しむ非行少年の立ち直りへの支援でもなく、私たち市民に対する露骨な管理統制を強化する陰湿な政治的陰謀の一環であることをあからさまにするものだった。
そもそも基本的な法律の改正には、科学的な検証と冷静な議論がなければならない。結果の重大性に目を奪われて、少年非行というよりも少年犯罪に焦点をしぼりこみすぎた過熱報道に煽られてはいなかっただろうか。被害者に対するほんとうに必要な支援を着実に実現するよりも、加害のひどさに対する感情的な声に流されていたのではないだろうか。刑罰的な面を強調することで規範意識を植え付けるということがほんとうに合理的なものか、冷静に検討できたのだろうか。
これからは、少年が犯罪をすれば、その少年にとってほんとうに必要な教育を通じて立ち直るという機会が与えられないことになる。人々が共に生きるインクルージョンの社会という世界的な傾向に反して、「改正」少年法は排除と隔離を前面に打ち出した。「厳罰化」という安直な方法は、まさにこのような排除と隔離の論理を押し付けるものだ。
折しも去る11月20日は、子どもの権利条約が国連で採択されて11年目にあたった。子どもの権利条約にふさわしいとされていた少年法が、今日、その素晴らしい面を十分評価されることなく、ざっくりと削り取られた。私たちは、少年法を「殺そうとする」このような企てに対し満身の怒りをもって、断固抗議する。
検察官関与に反対し少年法を考える市民の会
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