衆議院法務委員会における少年法「改正」法案採決に断固抗議する

2000年10月31日


 10月31日、衆議院法務委員会で与党提出による少年法「改正」法案が議論半ばで採決された。

 与党自公保3党の政治的駆け引きで上程された「改正」法案は、最初から与党による数の論理で審理が強行され、今日に至った。今国会は非拘束名簿式比例代表制度導入を巡り、野党が審議に出席しないという異常な事態が続くなか、衆議院法務委員会も、野党が欠席のまま進行してきた。野党の審議参加が途中からなされたが、最初から審議し直すのではなく、与党の予定日程で進められ、採決された。

 少年法は、社会や教育の在り方に関する基本的な法律の一つであり、少年だけでなく社会の安全にかかる法律である。新聞社説からも「改正」法案には大きな疑問が出されている。したがって、「改正」法案の審議には、これらの疑問、すなわち、現行少年法のどこに問題があるのか、運用の実態も含め検証し、現行少年法のこの50年の成果や、実際に少年犯罪は増加・凶悪化しているのか、厳罰化で果たして少年犯罪が予防できるのか、また今日どのような被害者対策が望まれているのかなど、数々の検討課題があったはずである。それらを踏まえて「改正」法案がこれらの検討課題の改善に叶うか否かの検討作業が不可欠であった。

 本来このような作業のためには、さまざまな関係者、子ども・保護者・市民から十分意見聴取すべきであり、少なくとも審議会にかけて検討すべきことである。

 しかし、与党は最初から数の力で強引に審議を進め、採決の時間を限定し、若干の関係者から意見を聞いただけで、上記数々の検討課題は棚上げにした。その僅かな審議の中でも、ますます「改正」法案の疑問は深まったにも拘わらず、更に検討することなく、強行に採決した。野党不在のまま法務委員会で趣旨説明が行われてから、わずか3週間強でのスピード採決である。「はじめに改正ありき」といった茶番劇でしかない。

 このような自公保暴走国会の中で、市民の間でも非常に関心の高い少年法「改正」法案が今まさに衆議院を通過しようとしている。

 新聞をはじめマスコミや識者は、現在の無責任な少年法「改正」に疑問を投げている。厳罰化では犯罪や再犯を抑止できない。少年犯罪は社会の鏡であり、必要なのは、子どもを尊重し、子どもの置かれて環境を改善することである。

 厳罰化が犯罪抑止にならないことは与党側も認めている。しかしこともあろうに、保岡法務大臣は、「少年法改正だけでは少年犯罪を止められるとは思っていない」としながら、「憲法改正、教育基本法の見直しを含め、21世紀に向かって社会全体の規範意識や責任と義務、個と公の関係など、新しい日本のあり方をきちんと求めていくことが極めて重大」と発言している。子どもを追い込む環境こそ改善されるべきなのに、この発言からは、子どもを力で押さえつける強硬な姿勢しかみえない。これではますます子どもが追い込まれ犯罪は増加する。しかも、憲法「改正」までも射程に入れて、まず「改正」が比較的簡単そうな少年法からはじめようという政府与党の思惑が露呈したといわざるを得ない。

 このような「改正」を断じて許すことはできない。少年法は社会や教育の在りかたに関する基本的な法律であり、少年のみならず日本の将来に関わる重要な法律である。
 このまま少年法「改正」を行わせ、来るべき21世紀に悔いをのこしてはならない。

 衆議員法務委員会における少年法「改正」法案採決に断固抗議し、「改正」法案の早急な撤回と、市民も含めた丁寧な論議を保障することを要求する。


検察官関与に反対し少年法を考える市民の会

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