少年法改正に関わる要請書
(2000年9月19日)
今年6月、衆議院の解散に伴い、先の国会で上程された少年法改正法案は審議されないまま廃案となりました。ところが、この間に起きた幾つかの少年犯罪を表層的とらえ、審判への検察官立ち会いや身体的拘束期間の延長などの政府案に加え、刑事罰適用年齢の引き下げや、重大犯罪は原則逆送などの内容を盛り込んだ新たな「少年法改正法案」が議員立法により今臨時国会に上程されようとしています。
今回の改正案は、法制審議会での検討も省略され、議員立法案としてまとめられたものであり、拙速な進め方については現場で取り組んでいる人々や教育関係者ばかりでなく、被害者の中にも戸惑いが出ています。未来を託す子供たちの健全な育成を願い、非行を犯した少年の立ち直りを支援するという視点から、少年法の改正に対しては家庭裁判所調査官や教育関係者、被害者、心理学者、ケースワーカーなど子供に関わる専門家や市民の参加のもとでの慎重な議論が必要です。
そもそも、非行を犯した少年を厳しく罰することで少年犯罪の防止がはれるでしょうか。諸外国の例でも、厳罰化は必ずしも非行防止につながらない結果となっています。非行の原因を作っている世の中を改善せずに、結果だけを見ての厳罰化は逆効果を生み出すだけで、刑務所に入れるのが少年の規範意識の覚醒に役立つとは思えません。
少年法は、非行に走った子供たちの社会的、精神的成長を、教育と福祉により支援することを目的にしており、少年法の「罪を犯した少年は罰するのではなく教育する」という理念が揺らぐことがあってはならないと考えます。
他方で少年犯罪を含む犯罪の被害者が放置され、被害者の権利が無視されてきた現実が、この度の改正の動きを促すひとつの要因となっていますが、少年法の改正は抜本的な被害者救済にはなりません。被害者に対する精神的・経済的・法的支援を含む総合的な対策は別途、早急に講じられなければなりません。
子供は大人社会を映す鏡です。子供が自らの力で成長できる社会の有り様を考え、体制を整備するのは大人の責任です。私たち、大人の側が子供の成長を保障する責任を放棄するに等しい、このような「改正」の動きに強く反対するものです。
少年法改正については是非を含め十分な論議を尽くすべきであり、今国会上程は見合わすことを強く要請いたします。
2000年9月19日
東京・生活者ネットワーク
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