参議院・法務委員会
2000年11月24日
日本共産党 橋本敦
私は、日本共産党を代表して、少年法等改正案ならびに修正案に対し、反対の討論を行います。
そもそも、少年法という少年の未来を大きく左右する重大な法案を法制審議会にもかけないうえ、まだまだ、国民的討論と国会での充分な審議が必要であるにもかかわらず、わが党の反対を押し切って審議を打ち切り、採決にいたったことは極めて遺憾であります。
反対のを第一は、厳罰化は少年法の「教育主義」「保護主義」という重要な基本理念を大きく後退させることであります。厳罰で対処しても、少年の犯罪・非行の一般的防止の有効な対策とはならないことは、アメリカや韓国などを見ても明らかであります。また、法務省が少年鑑別所に収容されている約1,600人の少年に対して行ったアンケート調査では「少年法が甘いから非行をしたのか」との問いに87%の少年が「違う」と答えています。
次に刑事罰適用年齢の引き下げの対象となる14歳、15歳という年齢は、いうまでもなく、いまだ義務教育の中学生であります。
このような少年を成人と同じ公開の刑事裁判にかけ、人生の幼い時代からはやばやと「」前科者」のレッテルをつけることなどということは、およそ国連の子供の権利条約や少年司法運営に関する「国連最低基準規則」、いわゆる「北京規則」の理念に反することは明白であり、わが国の憲法26条の「教育を受ける権利」を侵害するものであります。
また16歳以上の少年の重大犯罪は、検察官に対して、原則「逆送」し公開の刑事裁判にかけるとすることも、少年の保護・育成を妨げる重大な問題であります。現行法のもとでも、裁判官は事件の内容をよく吟味し、刑事裁判が必要とあれば「逆送」を決定しています。それを、あえて改正して、検察官に原則逆送とすることを、法律で定めることは、裁判の独立、裁量権を侵害する恐れがあり、重大な犯罪であるということだけで、裁判官の判断は「逆送」に傾くことは必至であります。そうなれば、家庭裁判所の調査も安易に流れ、少年法の本来の正しい運用が損なわれる恐れがあることも重大であります。
反対の第二は、審判への「検察官関与」であります。わが党は、重大な事件で「事実関係について疑義がある場合には、事実認定手続きに限って」「検察官関与」を検討してもよい場合もあると考えています。しかし、国連の「少年司法に関する最低基準規則」と、わが国の憲法31条が厳しく要請している予断排除、伝聞証拠禁止などの適正手続きが保障されないもとでは、検察官の関与は認めることは許されません。また、家庭裁判所の審判に対して検察官に「抗告受理申立て権」を認めることは、少年に対する迅速な教育的、福祉的処遇を遅らせることになります。
反対理由の第三は、犯罪被害者救済について、改正案には一定の改善があるものの、まだまだ不十分であることであります。
いうまでもなく犯罪被害者対策の充実は切実で重要な課題であります。被害者の人権と救済対策の抜本的改善のためには、被害者側の意見陳述権の保障、捜査段階を含めて情報開示の一層の充実、被害者に対する充分な被害補償と精神的ケア、すでに諸外国でも大きな成果を収めている適正な配慮と充分な準備の下での被害者側と加害者側の対面・メディエイションなどが必要であります。
最後に、少年問題は、社会を映す鏡といわれています。非行を犯した少年だけを責めるわけにはいきません。受験中心の管理、競争教育から子供たちを解放し、しっかりした基礎学力と市民道徳を身につけさせるための教育改革が必要であります。さらに、政治、経済、社会のあらゆる分野に潜む不正・腐敗をなくし、道義ある社会の確立など、まさに政治と社会の責任で少年を取り巻く良い環境を整備しなければなりません。
近年、特異な凶悪犯罪が発生したことに目をとられ、これまで現行少年法が50年間、はたしてきた効果的な役割と機能を正しく見ず、「厳罰化」を急ぐことは将来に向かって、重大な禍根を残すことになりかねないでしょう。
少年法の教育的、保護主義的理念は堅持すべきであります。罪を犯した少年に充分な反省を求めるとともに、その将来の人生に向かって、自覚的な更生の道を歩ませることが、家庭裁判所、少年院、保護施設などの人的、物的充実・改善とともに、いま求められているのであります。なお修正案は本法案の「厳罰化」など、以上述べてきた諸問題を必ず見直す確かな保障がなく賛成できません。
このことを強調して私の反対討論を終わります。
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