少年法「改正」成立への抗議声明


 少年法「改正」法案が、11月28日衆議院で可決成立しました。この「改正」は、第一に刑事処分を課することが可能な年齢を、現行の16歳から14歳に引き下げること、第二に16歳以上の少年が殺人や強盗致死などを犯した場合は、原則として刑事裁判を受けさせること、第三に家庭裁判所で行われる一定の審判に対し検察官の出席を認め、さらに事実上、家庭裁判所の決定に対し検察官が抗告できるような制度等が盛り込まれており、全体として厳罰化をすすめるものです。

 この法案が9月29日に衆議院に提出された翌日、私たち子ども全国センターは「少年法の精神をそこなう厳罰化『改正』に反対します」との声明を発表し、次のような基本的な問題点を指摘しました。すなわち、この法案は法制審議会に審議を経ずに上程されたものであること、少年問題には社会的・文化的状況が大きく反映しており、その問題点を明らかにするべきこと、子ども自身と保護者や子どもに関わっている多方面の専門家の意見を十分に聴き、問題が生じた原因を解明し、そのうえで子どもの成長・発達保障を第一次に考慮すべきであること、従って幅広い国民的議論のなかで少年法の改正が必要か否かをふくめた十分な議論がされるべきことなどです。

 しかしながら国会では、与党三党によるきわめて強引で不正常な国会運営のもと、あわただしい委員会審議が拙速に行われました。にもかかわらずこの間に参考人陳述やマスコミの報道、集会などで、「青少年犯罪の増大・凶悪化」は事実に反すること、重大な事件を引き起こした少年でも、少年院の矯正教育のなかで十分に立ち直った実績が積み重ねられていること、家庭裁判所の審判に対して厳罰化のもたらす重大な悪影響が危惧されるのみならず、少年の立ち直りをますます困難にする危険があること、少年の責任追及が直ちに厳罰化に結びつかないことなどが明らかになりました。

 ところが国会では、これらの点について十分な調査も議論もされることなく、成立に向けて形式的な審議と採決を強行したのです。このような政治的思惑が主導した少年法の「改正」は、子どもの成長・発達権の保障に対する責任の放棄といわざるを得ず、私たちはとうてい許すことができません。採決にあたって付け加えられた「施行5年後に見直す」という付則条項自体が、今回の審議の不十分さと「改正」の必要性への疑問をよくあらわしています。

 私たちはこの「改正」強行に強く抗議するとともに、今後の運用にあたって本来の少年法の精神と、子どもの最善の利益が尊重されるよう、引き続き努力するものです。

2000年11月29日

子どもの権利・教育・文化・全国センター

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