「少年法の厳罰化に反対する緊急声明」要旨
2000年10月6日
少年法「改正」問題研究会
私たち少年法「改正」問題研究会は、刑事法学者として、少年法を厳罰化する「改正」法案に強く反対し、すみやかな廃案を求める。
1 法案の作成は、政治的思惑や駆け引きによって、拙速になされた。
2 少年法は子どもの教育の根幹にかかわる基本法であるから、その改正を論じるにあたっては、少年非行の原因、少年法の運用状況、子どもを取り巻く社会環境について正確な事実認識を踏まえて、少年法や教育にかかわる専門家の意見も十分に聞いたうえで、開かれた自由な討論を、科学的で理性的な態度の下に行うべきである。
3 公式統計の科学的分析からも、少年非行の「凶悪化」には疑問がある。最近の非行事件も、子どもの「凶悪化」を示すものではない。
4 非行の原因は複雑であり、子どもを取り巻く社会環境が複雑に影響しており、少年が利害得失の合理的な計算に基づいて犯行に及ぶわけではないから、刑罰の威嚇によって、少年非行が効果的に防止されることはない。
5 非行をした少年に厳しい刑罰を科すことは、社会や家族からの長期の隔離、教育的支援の剥奪により、少年の社会復帰を困難にし、かえって再犯の可能性を高める。
6 刑罰の力によって、少年が、被害者が被った痛み苦しみを含めて、自己の非行の意味を心底から自覚することはできない。教育的支援のなかで少年が心を開き、自他ともに人間の尊厳を尊重することができるようになったとき、再犯の防止と被害者への償いが可能になる。
7 少年法を厳罰化したところで、捜査機関や報道機関の対応のあり方の見直し、精神面、経済面での援助、社会的支援の拡大・強化という、被害者やその遺族にとって真に必要な課題の解決にはならない。
8 少年法の厳罰化に安易に頼ることは、これら真に取り組むべき課題を放棄することにつながり、結局、少年にとっても、被害者にとっても、社会の安全にとっても、問題をいっそう深刻化させる。
9 少年法「改正」法案がもし実施されたならば、刑事裁判所や少年用拘禁施設の過剰負担など、刑事手続や刑罰執行の実務に大混乱が生じることは必死である。
10 少年法の厳罰化に安易に飛びつくのではなく、真に必要とされることは、少年法の教育主義の理念を豊かに発展させつつ、実務のなかに具体化すること、さらに、子どもたちが夢と希望をもって日々を生き、健やかに成長発達できるような社会を創造することである。
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