11・16委員会 傍聴メモ
参議院法務委員会第4回(実質第3回)。前回に引き続き議員質疑。午前は久野(自民)・江田(民主)、午後は魚住(公明)・橋本(共産)・福島(社民)・中村(さきがけ)の各議員。
久野氏は医師として精神障害者による犯罪に関連する質問をした。
責任能力なしとして無罪になり措置入院した患者の退院について、保岡法相は「司法の判断を経るようにした方がいい」という趣旨の答弁をした。(新聞でも報道)
矯正施設の医師の数について、矯正局長「少年院74、刑務所224」と答えたが、そのうち精神科医については答えず。
服役中の医療費負担や年金の扱いについても質問。「温かい制度を作ってほしい」
江田氏は裁判官として少年審判の経験ある(おそらく唯一の)国会議員としての感慨や9月以降の経過における迷いや悩みを初めに語った。
与党案中、被害者保護の部分は「全く賛成で、ここだけ切り離して成立させてもいいと思うが、なお足りない点がある、基本法を何とか与野党一緒につくりたい」、犯罪給付金について保岡「台風などの被害者との均衡もあるし」江田「台風とは違う、社会の質の問題、社会内で犯罪は避けられず、不測の事態にあった時に助け合うことが必要」 また少年が変わった、ということについて「変わっていない点も見るべきだし、また大人は変わらず依然として立派な大人で少年をどうにかしよう、というのは違うのではないか」
審判のあり方について、懇切なごやかに「内省」云々を加えた理由を追及した。谷垣「懇切なごやかというのは保護教育の場という考えからだが、真摯に反省を促すためには毅然とする必要があり、法律上この点が必ずしも明らかでない」江田「ということはこれまでの審判は内省を促すものになっていない、という認識があるのか」谷垣「法律に含まれていないとは言わないし実際の審判もそうだと思うが、今の少年を見てそういう改正が必要だと思う」江田「最高裁はどう認識しているのか」安倍家庭局長「具体的審判の現場において、裁判官は内省を促すようにやっている」(最高裁が現場をきちんと擁護した唯一の場面でした。)江田「それならどうして加えるのか、善意に解釈すれば、一般の人が誤解しているので、特に加えたということか」谷垣「当然のことでも法律に入れることに意味がある」(助け船を出したのに提案者はのらず)江田「現場のことを十分踏まえずに世の中の持っているイメージに引っ張られているのではないか」
「戦後の少年司法は総体として合格点、家裁と少年法関係者の努力は拍手を送るべきではないか」杉浦「評価しないのではないが最近の家裁の処分は甘すぎるという認識が与党内にあった、1条を変えるべきとの意見もあったが22条を変えるということになった」江田「内省を促すといっても説教だけではうまくいかない、心の襞に入る必要がある、大人はそうでなく刑に服せばよい、余計なことをするな、ということになる、少年の方がはるかに奥が深い」
「家裁で最も重要なのは調査官だ、20条2項但し書きの『調査』は家裁調査官の調査か」○○「そのとおりだ」
「原則逆送の原則というのは数のことなのか」谷垣「必ずしも数とは考えていない、数がどうなるかは別のこと」
「複雑多岐にわたる場合等に大変なので合議制が必要だと最高裁は言うが、『何を言っているんだ』という感じだ、3人で分担してやるとでもいうのか」安倍「そうではない」江田「大変だというのでは裁判官としての覚悟が問われる、頭から合議制を否定するのではないが、局長の説明を聞いていると少年も変わったが裁判官も変わったな、カツ食らわさないとという気持ちもする」
「検察官が入るとどうなるか、刑事裁判は予断排除の原則もあって検察官の嫌疑を受け継がないが、少年事件では検察官の嫌疑を記録とともに受け継ぐ、そういう嫌疑も持ってきた検察官が出席したら少年はどう思うか」谷垣「裁判官だけではやりにくい面もある」(本質的な答えを逃げている)
「14歳と16歳がダブルスタンダードだというが趣旨が違うのではないか、16歳というのは刑事裁判の当事者としてきちんと行動できるかどうかの能力の問題で、それ未満は必要的弁護にすべき。」
「家裁の充実強化と地域的ネットワークの構築が必要、名古屋の5,000万事件でも家裁が相談室を設けて前もって相談に乗る態勢が必要だったのではないか、家裁は社会的機能を持った裁判所として重要だ、昨日30年前の補導委託先を最高裁に尋ねたが、分からないという返事だった、それでは困る。」
魚住氏。抗告受理申立について。事後救済について(本人生存中に限るのはどうしてか)。保護者責任について(具体的にどうするのか)。被害者の記録の閲覧謄写や傍聴について。給付金制度の見直しについて。
修復的司法について。弁護士会も提言しているし、公明党も提言している。保岡「できるだけ適切な対応をしていきたい」
橋本氏。14・15歳の刑事処罰について「過去に法制審議会で議論されたことがあるか」刑事局長「ない」橋本「公開法廷に耐えられると思うか、社会的威嚇にさらされる、法制審にかけるべきだったのではないか」保岡「前国会での付帯決議もあり、選挙を受けた立法府の責任において真摯な検討をしていただいたので、法制審への諮問はしなかった」杉浦「議員立法を法制審にかけないのはけしからんという考えはおかしい」 年少少年の殺人の統計を指摘して「わざわざ法律を改正しなければならない必要があるのか疑問、諸外国で法律の建前と別に、実際に刑罰を課している年齢はどうなっているのか」古田「網羅的に調べていない」橋本「英米独などでも18歳ではないか」杉浦「実際に刑事罰を課されているのはごく僅かでしょう」橋本「各国ともいろいろ苦労している、子どもの権利条約、国連最低基準、日本政府への勧告などに照らしても、14・15歳の子どもを簡単に刑務所に送っていいのか」
「16歳までは必ず少年院に入れるのか」杉浦「できる、ということ」橋本「少年院の中でどう区別するのか」(杉浦・家庭局長など答える)そのような接ぎ木細工のようなことで実際できるのか」
福島氏。「前回法務大臣が愉快犯、確信犯のことを言ったが、具体的にどの事件を指すのか」保岡「具体的には言えないが、(いろいろ前回のようなことを繰り返し)」
「草加事件で検察官は証拠を家裁に送らず、おかしな報告書を家裁に出した、検察官が関与することで真実発見に近づくのか」高木「検察官がそんなことをやったら大変なこと、その一例がそうだとしても」福島「では綾瀬母子殺人事件で警察がアリバイ証人を事実上監禁して検察官が調書を取ったことについてはどうか」高木「個別の問題をやっていくときりがない、そういうことならば検察官も警察も捜査ができなくなる」
「審判に検察官が出てくると審判構造はどうなるか、職権主義の悪い面と対審構造の悪い面が出てくるのではないか」谷垣「両方の良い面が出るように運用されると思う」 「子どもにとって2回の負担になるのではないか」漆原「家裁は対審構造ではないので2回とは思わない」
「前回杉浦氏は『原則逆送になれば家裁の負担が減る』と発言したが、どういうことか」杉浦「原則逆送でも家裁は充分に調査する、舌足らずだったかも知れないが」
「保護処分が甘くて刑事処分が厳しいのか」杉浦「そんなことは一度も言ってない」 「反倫理的ならどうして逆送なのか」杉浦「反倫理的なら逆送とは言っていない」
「結果重大ならどうして逆送なのか」杉浦「結果重大なら逆送とは言っていない」
「なぜ原則逆送が必要なのか分からないので聞いている」杉浦「家裁の裁量権が大きいが、家裁の裁量権行使がちょっとゆるすぎるんじゃないでしょうか、裁量権を少しノーマルな方へ変えてもらいたい」
中村氏。「改正法案のうち被害者保護は賛成、別建てにすべきだと思う。年齢引き下げや原則逆送は家裁の権限を分譲する、ということだ。家裁は甘いというのが基本的理由になっているが、甘い辛いの問題ではなく家裁が適切にやっているかどうかだ。背景に世論がえいき・いしているが、マスコミ報道のキャンペインが問題。きっかけは97年の神戸事件だが猟奇性がありマスコミにとっては商売になるネタで、次は何かないかと探すようになるし、タイトルが必要なので「17歳は凄い」というわけだが、17歳はたまたまのことで浅沼刺殺事件も17歳だった。」
事務局作成のここ数年の事件22件のリストを使って、・動機の分かりやすいいわば古典的なケース、・怨恨や激情など感情的なケース、・人格障害と思われるケースの3つに分類したうえで、それぞれについての家裁の処分を分析し、各々適切に処理しているのではないか、と追及した。
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