11・14委員会 傍聴メモ

 参議院法務委員会第3回(実質第2回)。前回に引き続き議員質疑。小川(民主)・魚住(公明)・橋本(共産)・福島(社民)・平野(自由)・中村(さきがけ)の各議員。

 小川氏。逆送に関して、杉浦「家裁の逆送率が低い、実刑を相当とする時と考えているのではないか、執行猶予も罰金もあり得るのに」すかさず小川「執行猶予よりも少年院の方が被害感情からみてもいいのではないか」と追及したが、杉浦「個々のケースについての裁判官の考えだから一概に言えない」と逃げる。(裁判官の判断基準を攻撃してきた同氏の言動と矛盾したことを平気で言う。

 次いで事実認定における適正捜査の重要性を強調。また予断排除や伝聞法則がないことの問題を強調。杉浦「そういうことが心配なケースなら逆送すればいい」小川「事実認定のための逆送というが、刑事処分相当と考えるのではなければ逆送はすべきではない」またアメリカ等について「厳罰によりそれ以上増える可能性のあったものが増えないですんだと言ったが、根拠となる社会情勢があるのか」麻生「アメリカではジュリアーノ市長、1980年代以降まちがいなく沈静した」(前田教授の説が念頭にある。

 橋本氏。原則逆送について。小川「20条の調査というのは調査官中心か」家庭局長「調査官が主に担当しています」。(必ず調査官による調査をするのか、を提案者に確認すべきだったのでは?

 少年院仮退院後の再犯率の低さを指摘し「少年院での処遇が社会防衛としても有効でないか、家庭局長どうか」家庭局長「個々のケースのことゆえコメントは控えたい」橋本「総括的な判断を聞いている」と追及すれど家庭局長「個々のケースの判断に繋がるので控えたい」橋本「法務大臣どうか」保岡「えー、あの、確かに少年院はすぐれた処遇をしてきたが、最近の年少の重大事件の愉快犯、確信犯(自分は少年法で守られている、と確信)に対しては有効な抑止につながる」

(ここまでで切れたが、後は福島議員が引き継いだ恰好の質問をした)「原則逆送によってどういう法的効果を期待しているのか」杉浦「この改正は近時の事件に対する家裁の対応に端を発している、対応がおかしいのではないか、家庭でも親の手に負えなくなった子を警察に突き出すことも必要」橋本「裁判への干渉だ、もっと実証的に議論すべきだ。」

 福島氏。「再犯率の低さについて最高裁はどう総括しているのか」と食い下がるが、家庭局長「いろいろな人の努力の結果と見ている」福島「現場の調査官などから反対意見が出ていることをどう思うか」家庭局長「ひとつの意見として出ていることを承知している」

 「4年前の権利条約の政府レポートで少年司法制度について、対審構造でないことや16才未満が刑事手続に移らないことについて肯定的に述べているが、なぜ急に変わったのか」刑事局長「どういうポリシーでできているかを書いている」(次回の報告書にどう書くつもりでいるのか無責任なことである。

 「矯正局で出した『現代の少年非行を考える』では少年の未熟性とそれへの対処を指摘しているが、改正法案と考え方が違うのではないか」矯正局長「その考えはそのとおりだが矛盾はしない、両方相まって抑止に役立つ」福島「抑止は提案理由にない、規範意識をいうがあいまいだ、杉浦氏はおばあちゃんの話をするが。また愉快犯・確信犯というが、どの事件がそうなのか」保岡「個々には答えられない、一般的な傾向として言えば愉快犯は面白半分、オヤジ狩りなど。確信犯は免罪符持っていると錯覚している。こういう子どもには犯罪抑止の一助たり得る。またテレビばかり見て他人との関係が希薄化して生命を軽んずること問題。その重大性を認識させる必要あり、被害者の気持ちを鎮静化する機能も否定すべきではない」 (愉快犯・確信犯の存在を改正理由として強調しているのであるから、具体的な事件名を言うべきではないか?

 検察官関与について「草加事件は少年事件でクロ、民事事件の最高裁で逆の認定になった、これは審問構造の問題でない、検察官も事実上関与した、だからこそとは言わないが、どう総括しているのか」(検察官が証拠の隠蔽をしたことを指摘すべきでは?)高木「一件を以て言うことは出来ない」(綾瀬母子殺害事件での証拠隠しを指摘すべきでは?

 平野氏。人間にはなぜ教育が必要か、を哲学的に展開しようとする。

 中村氏。現行では検察官は「捜査を遂げた後」家裁に送致する、となっているが、実情はそうなっていないではないか、と追及。「前回杉浦氏は原則逆送にすれば警察も公判請求を前提にしっかり捜査をするだろう、と発言したが本末転倒ではないか、操作現場を充実させることが先決だ」杉浦「私どもより捜査現場をご存じないかもしれないが司法修習の時にベテラン検事が起訴か不起訴が見通したてて、起訴事件について警察を指揮して捜査をさせていた、不起訴であればある程度のところまでだ、山形マットでも警察が初動捜査をしっかりやっていればよかったが、家裁に送致してもどうせ戻ってこないとなれば、後は家裁でやって下さいとなるのは当たり前のこと」中村「少年法の理念から言って問題だ、原則逆送にすると家裁のウェイトがどんどん小さくなるのではないか」杉浦「それは誤解だ、大部分の事件は対象外事件で家裁が有効に機能するし、逆送によってかえって家裁の負担が減るので充実する」(杉浦議員は逆送すれば警察は捜査をしっかりするようになる、とかねて説明しているが、今日は最もハッキリと開き直った。不起訴と保護処分を同列に論じているところは、保護処分に対する認識の低さを露呈したもの。

感想 各議員はかなり追及し、提案者や法務省のいい加減さを引き出しているが、追及 が不徹底と思われる点もいくつかあった。

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