11・8-9参議院委員会 傍聴メモ
11・8参議院本会議
趣旨説明(麻生議員)に対して3野党(民主・共産・社民)から代表質問。ホームページに掲載されているとおり。与党政府はまともには回答せず、そらしていたが、犯罪抑止効果については「犯罪抑止に有益である」という新しい説明を使いはじめた。
福島議員(社民)が修復的司法をどう考えるか質問したのに対しては、法務大臣も官房長官(首相の代理)も肯定したうえで「運用でも可能だと思う」と発言した。
11・9参議院委員会
第1回の委員会審議。午前に石渡(自民)・竹村(民主)、午後に魚住(公明)・橋本(共産)・福島(社民)・平野(自由)・中村(無所属)による委員質疑である。
石渡氏は初心者的な発問をしながら提案議員に法案の宣伝をさせた。要するに馴れ合いである。
竹村氏は衆議院での論議を踏まえながら網羅的な質問をした。質問の中で「被害者配慮規定だけ切り離して賛成できれば本当にいいのですが」と発言した。
長期的な犯罪減少傾向について、麻生氏「見解の相違、最近出た本(前田雅英著「少年犯罪」と思われる)によれば一貫して増えている、との指摘もある」。
子どものストレスや社会的未熟性について、保岡法相「少年法を意識し免罪符を持っている、という誤った認識に基づいて犯す少年もおり、そのために国民が非常に不安を感じている」と強調した。
保岡法相が水島議員の質問に口ごもってしまった件について、保岡法相「すべて原因を知り尽くしたうえで立法の必要性を論証することは難しい、という趣旨で発言しただけ」と逃げる。また規範意識の強化について、杉浦議員はまともに答えず「幼時祖母から朝夕仏壇の前で『悪いことすると地獄にいく』と諭されたことが自分に良かった」と発言(衆議院でも同じ話をした)。
「国民の危機意識」について、杉浦議員「衆議院選挙を戦った我々と参議院は温度差がある、来年の参議院選挙をくぐり抜ければ違うのではないか」
「少年院の再犯率が低いことを評価するなら、なぜ少年院送致処分では駄目なのか」との問いに提案議員はなかなか答えず、保岡法相「再犯率が低いからと言って全員少年院送致でいい、というわけに行かない」
20条2項ただし書きの「調査」とは調査官調査の意味か、との問いに安倍家庭局長「そのように予定している」
魚住氏は与党同士でやはり馴れ合い。高木議員「犯罪抑止の一助になる」
橋本氏は、衆議院で杉浦議員が「法務省から『議員立法でやってほしい』と言われた旨発言していることについて「法務省は本当にそういったのか」と追及し、古田刑事局長「お願いしたことはない」杉浦「舌足らずだった」との答弁を引き出した。また被害者保護について日弁連の提言を指摘した。
福島氏は「少年院収容受刑者」の地位はどうなるのか細かく追及。漆原「受刑者であるが、16才未満にふさわしい物的人的施設がないので少年院を利用させてもらう」
16才になったら刑務所に移されることについて、麻生「犯した罪は重いので当然」
また「提案理由から『犯罪抑止』の言葉が抜けているのはなぜか」との問いに谷垣議員は答えずに「犯罪抑止に役立てたいと思っている」
「人を殺してはいけないということを教えるのに、少年法をなぜ改正しなければいけないのか、なぜ今の少年法でいけないのか」と強く強調した。
平野氏は、保守党でありながら岡崎事件に熱心にかかわり警察批判をしている議員であり、この日も「自分は岡崎事件に関与するようになって人権派になった」と発言したが、他にもいくつか注目すべき発言(質問)をした。「改正案を見て悩みに悩んだ、フロリダの有権者の気分だ」とも。
また「ある市民から来た『凶悪事件が増えてきたのは学校の内申書に観点別評価が導入されて子どもが追い詰められたからではないか』という手紙を読んで目から鱗が落ちた気持ちがしたがどうか」と質問、保岡「それなりの意見と思うがどれだけ因果関係に影響しているか疑問、文部省がいろいろ検討している」平野「因果関係などと法律家的なことを言わないでくれ、自分は専門家は信用しない、教育改革も日本をよくするためにやっていると思えない、大人の非行や非行政治家をどうするか、診断書なしで首相を辞めさせたり約束に反して選挙法を変えて議長を辞めさせたり、青少年にものすごく悪い影響を与えている」とズバズバ批判。
また「事実認定の適正と被害者保護は現行法でもできると思う。問題は人間の姿勢であり警察の姿勢だ。」杉浦議員が「そのとおりだ、裁判官調査官の考えを変えなくてはならない、逆送できるのにしなかった」と我田引水発言をしたが「岡崎事件は権力を持った者の隠蔽行為だ、日本は近代社会ではない」と話を元に戻す。
また「14才引下げは悩ましい、いいかと思ったが友人の法務省OBも『とんでもない』と言っている、いろんな人の意見を聞いて慎重に検討すべきだったのではないか、法務省の本音はさわってもらいたくないのではないか」と水を向けたが、保岡「法務省が消極意見を述べたことはない」杉浦「占領下で16才にしことが間違いだった」
中村氏も無所属議員として平素筋のある発言をしている。「世の中暗くなっていく、政官財の腐敗がどんどん広がって教育現場も崩壊し、明るい話はオリンピックの金メダル程度、国民はイライラしており、その中で少年事件が続いた。過去にもあるが、マスコミはもっと強調して書いて国民は不安になる、『子どもまでが、大変だ』となる、その人たちの多くは少年法を知らない、なぜいきなり少年法改正に行くのか、国会での議論も足が地についていない、具体的に分かっていることをベースにして冷静に考える必要があるのではないか」と指摘。谷垣「イデオロギー的でなく実証的な議論というのは賛成だ」としたうえで検挙率の低下を説明して「憂慮すべき事態である」中村「しかし少年犯罪の殆どは軽微な事件だし殺人は低いレベルで横ばい、再犯率が顕著に減っているではないか、刑務所より少年院の再犯率が低いのではないか、なぜ原則逆送の必要があるのか」谷垣「少年院の再犯率が低いのは少年に可塑性があるから」中村「法律を変えればさらに抑止できるのか、規範といっても少年だけの問題ではない、降下があると確信できなければ変えるべきではない」杉浦「問題は凶悪犯罪に対し司法の対応がずれているのではないか、という基本認識がある、岡崎事件にしても原則逆送なら警察も公判請求を前提にもっときちんと捜査をしたのではないか」
中村「修復的司法を利用して再犯率をさらに下げるというのが現実的ではないか」麻生「ケースによってはうまくいくと思うが」
中村「子どもの心理的精神病的な背景に対処する専門家の状況はどうなっているか」麻生「小児学会で『雨にも負けず』をもじった『雨にも当てず風にも当てず云々』という詩(?)が紹介されたそうだが、小児科の医師でもむつかしい」中村「少年法を改正しても意味はない、もっと研究する必要がある。」
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