10月31日委員会傍聴メモ
総括質疑。質問議員は藤島(自由)、保坂(社民)、山花(民主)、日野(同)、木島(共産)の5名。山花、日野委員とも与党案反対の立場を維持して質問した。なお冒頭に自由党の18歳引き下げ修正案の趣旨説明があった。
採決までいくことは先週の段階で理事会で決まったように聞いてはいたが、民主党が与党案賛成にまわることまでは予測せず、朝刊でそのことを知ってびっくりした。ただ法務部会は強く反対していて本日早朝に再度法務部会を開くという記事だったので、一縷の望みを持ったが、9時の委員会開始の時点で佐々木議員(理事)の顔色がすぐれなかったため、やはり駄目と察した。審議の途中も民主党議員全員が別室にこもってしばらく協議したり、戻ってきたあと日野委員ら何人かの委員の交代があり、最後に採決になって佐々木議員ひとり席を立って退出し(付帯決議の採決の時にはまた戻った)、他の民主党委員は起立賛成した。後になって、交代したのは反対意見を変えなかったため執行部により差し替えられたことがわかった。
そのあと与党と自由党による付帯決議(改悪方向での再検討)が提案され、民主党も含めた反対で可決された。
藤島議員は18歳引き下げのほか「大人の犯罪の加害者は国の裁きを受けるが少年犯罪の加害者は保護されている」から、少年犯罪の被害者は特に保護されるべし、と強調した。答弁の松浪議員は、民主党がこの春出した被害者基本法についてふれ、いくつかの難点があった、として「被害者の権利が一方的に強調され、被疑者の防禦権が不当に制限されている」と発言した。これは基本法を制定したくない政府のいう理屈のひとつであろうが、このような被害者を刺激するような発言は審議中で初めてであり、おそらく今日はもめずに可決される、という安心感から漏らしたものと思われる。
保坂議員は「凶悪化、低年齢化しているのか」と統計を示してあらためて法務大臣に迫った。これに対しては「統計はそういう点もあろうが」といいつつ「世間一般が非常に危機感を持っていることが改正の動機だ」と述べた。同じ表現を後でも繰り返した。この説明は今日が初めてと思われる。保坂「日本の少年院をどう評価するのか」「非常にすぐれた財産、再犯率も改善されている」「それならも少年院を拡充する方向で考えるべきではないか」「厳罰化による規範意識の教化と教育改善はどちらも重要」
保坂「アメリカの例をどう考えるのか」上田「犯罪の発生はさまざまな要因、厳罰化が増やしたかは分からない、94年からの減少が厳罰化の効果かも分からない」
保坂「規範意識の強化にとって中川辞任はマイナスではないのか、」松浪「いい影響あったとは思わぬが、殺人のような問題とは関連しない」
保坂「処分が甘いという意見があるが、どちらが社会にとって安全か」杉浦(そらして)「予防が大切、自分は幼いころ祖母から『嘘つくと閻魔様』と教育された」
このあと保坂議員は少年院が少年受刑者の収容によって監獄的な要素が持ち込まれ、その性格を大きく変えてしまうことへの危惧を強調した。なお16歳未満の受刑者を少年院に収容することは杉浦「必ずではなく、できる、ということだ」。
山花議員は法務大臣の会見発言について「唐突かつ軽率ではなかったか」と追求したあと、「戦後3回の波があったということは、少年法を改正しなくとも犯罪が減ったという減少があったことは事実だ、そのことについて一定の総括が必要ではないか」と迫り、谷垣議員が1回目と2回目のそれぞれ増加と減少の原因について私見を述べ、3回目の波は豊かになって非社会的享楽的になった、その波が収まったのかどうか分からない、これから分析する必要はある、と答弁。
山花(凶悪化統計について)「検挙方針によって影響する、と葛野教授が大阪府警の例を出しているが、どうか」麻生「検挙の仕方によってちがうのはそのとおりと思うが凶悪事件は人口比で増えている」
山花「被害者の感情を充分くみ取ったうえで、なお譲れない部分もある、厳罰を急ぐよりも被害者の権利をしっかりしてほしい、との岡崎参考人の意見は重要だ」
日野議員「これまで厳罰化と保護の関係を議論してきたが、少年を何とか立ち直らせようとする人たちは刑事処罰という考えになりにくい、世間をびっくりさせる事件が続いていることは確かで、それに対して刑罰をという考えが一般の人の心の中にきざすことは否定できないが、我々としては『少年が社会にどう戻ってくるか』という視点が大切ではないか」
次いで原則逆送規定について日野「共謀共同正犯理論によれば見張りでも該当することになる」杉浦「但し書きを運用すれば心配ない」日野「保護主義を理解したよほど勇気のある裁判官でなければ、そうはならない」
木島議員は検察官関与について「検察官関与を全面否定するわけではないが、与党案では適正な事実認定はできない、少年は警察のいいなりになる危険強く、捜査改革や審判での防禦権保障ないままで検察官が入れば、冤罪の危険がある」と強調。
次いで委員会で明確に議論されていなかった検察官関与や抗告受理申立の要件について追及した。「犯罪事実の認定でなく要保護性の認定のためにも関与できるのか」杉浦「ほぼあり得ないと思う」木島「立法者の説明としておかしい」杉浦「具体的に言えないが絶無とは言えない」木島「そんなあいまいでは欠陥法案ではないか」漆原議員が助け船で「犯罪事実を認めていても身代わりという心証あれば放置できない」木島「身代わりなら不処分にすればよい、検察官は不要」と反論したあと「それでは動機が解明されていない場合はどうか」漆原「5条の2で動機も非行事実に含むので、関与の対象になり抗告受理申立の対象にもなる」木島「要件が非常に広いことが明らかになった」
木島「そもそも少年に自省自覚を求めるのに刑罰がいいのか少年院の教育がいいのかの問題だ、被害者すべてが厳罰を求めているのではなく国民の声もそうだ、厳罰では再犯防止に役立たないという声は国民にも強く現場にも強い、家裁の判断が甘いというが実証的な研究があるのか」杉浦「研究はないが最近続いた事件の逆送率が低い、という現実はある」木島「何を根拠に低いというか」杉浦「低いと見るか高いと見るか、だ」木島「見解の相違ということで審理を終わるわけにはいかない」
木島「少年に本当に規範意識を持ってもらうために刑罰がいいのか少年院の徹底的な人格教育がいいのか」保岡「重大な事件を犯しても罰を受けるという意識乏しく甘く見ている傾向あり、世間がそれに危機感を持っているのも事実だ」木島「回答になっていない」保岡「二者択一の問題ではない」木島「これまでの家裁や少年院の実績をどう評価しているのか」保岡「大きな役割を果たしてきたが社会の変化で少年も変化した、少年の変化に対応しきれていないのではないか」木島「97年に東条矯正局長はもう少し今の少年法をやらせてほしいと言っている、98年に坂井矯正局長は『歪みから未熟に変わった、成熟を促す少年院教育が重要だ』と発言している。少年犯罪の質、少年の質が変わった、だからこそ何か重要か、という問題ではないか」
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