10月27日委員会傍聴メモ

 野党推薦の9名の参考人が意見を述べました。福島章氏(上智大・精神医学)、佐藤欣子氏(弁護士・元検事)、飯室勝彦氏(東京新聞論説委員)、守屋克彦氏(東京経済大・元判事)、塚本猪一郎氏(画家・西鉄バスジャック事件被害者遺族)、葛野尋之氏(立命館大)、斉藤義房氏(日弁連子どもの権利委員会委員長)、寺尾絢彦氏(元家裁調査官)、岡崎后生氏(会社員・牛久事件被害者遺族)。自由党推薦の佐藤氏をのぞき全員が、与党案の内容ないし審議のあり方に批判を述べました。

 福島氏。過去に精神鑑定をした目黒区両親祖母殺害事件の加害少年は、事件直後に罪悪感がなく情性欠如と思われたが2年後に面会したところ全く変わり反省著しかった。西鉄バスジャック事件も鑑定し、前頭葉機能が未熟だが矯正教育により精神的成熟が期待できると判断した。思春期には心と体の発達がアンバランスであり、14才15才はインターネットを駆使して大人並の能力があるように見えるが、一番慎重を要する時期である。残虐に見えるのは未熟なため。刑務所では発達が遂げられないだろう。年齢区分を引き上げるのならともかく引き下げるのは合理性がない。少年法の適切な運用によって落ち着いており、特異事件が時々おこると何かやるべしとの不安が生ずるが大局的に考えるべき。
 (世論調査についてどう思うか)一般の人は子どものとらえ方が表面的ではないか。

 飯室氏。論説の立場として、凶悪化しているかいないか、という空中戦はやめ、どうしたら立ち直らせるか、責任をどう考えるか、どうしたら未然に防止できるか、を重視している。少年院の先生の話でも規範意識以前の対人関係や感情コントロールの未熟性つまり人間としての未熟性があり、そういう人に刑罰が本当に抑止力になるかは疑問。ひとりでも思い止まれば改正に意味がある、という意見もあり得るかもしれないが、そうであれば弊害を少なくするため、例えば原則逆送の場合でも調査をしっかりする、ということが不可欠。事件の取材でも初めの印象と違ってくることが多い。5,000万円恐喝事件でもそうだった。
 被害者への開示と別に、国民一般への情報開示も必要だ。冷静な機関による情報発信が考えられるべき。一律報道禁止は憲法違反の誹りを免れないのではないか。
 (世論調査についてどう思うか)インターネット上では「生命には生命で償え」という意見が横行しており、「冷静に」との意見はすぐに罵倒されてしまう。そうなったのは報道の責任もある。「20才前は大丈夫だ」と語った、というようなことを、きちんとした供述でもなく雑談レベルなのに、報道してしまう。それから加害者か被害者か、というような問題設定がはびこっている。別のものとして考えるべき。一般の方にはそれが伝わっていないのかな、と思う。
 少年犯罪が凶悪化した、激化したという記事を現場の記者が書いたことは否定できないが、(東京新聞の)論説として書いたつもりはない。ただ逆に数字を挙げて「問題ない」というだけで被害者に対する冒涜になる、と思う。
 少年法は駄目だという視点ではなく、改善する、という視点が大切。

 守屋氏。本日は、1.教育主義の実績を充分評価していただきたい。2.現場の人間(調査官・鑑別所・少年院・刑務所など)の意見を充分聴いてほしい。3.加害者もいずれは地域社会に戻る、という視点で考えてほしい。4.そのうえで刑罰がいいのか、保護教育処分がいいのか、を考えてほしい。
 裁判官として40年在職した間、常に少年法の改正論争はあったが、手続論や法律論ばかりで少年の状況については議論されてこなかった。
 被害者の問題を少年法は受け入れていない、との批判がある。試みとしてはやっていたがもっと運用がなされる必要はあり、そのためにも保護処分の方がより有効と思う。
 14才引き下げ、原則逆送には反対である。
 審判手続きについてはいろいろ検討してみたが、捜査のあり方も含めた視野からではないと建設的な方向にいかない。
 裁定合議について裁判所内に反対は殆どない。ただ慎重に考えるシステムとして参審制が最もふさわしいと思う。

 塚本氏。被害者になってみて、政府は何もしてくれない。給付金も1年後だという。一家の大黒柱だったらどうなるのか。こういう状態の時に加害者について聴かれれば「厳罰にしてくれ」と感情的に言うしかないが、それは江戸時代の仇討ちの思想だ。まず何よりも被害者の生活が成り立つようにしてほしい。
 被害者に対する罪は加害者の更生によってしか償われない。その更生というのは単に社会に戻ってくることでなく、「すみません、一生償います」と初任給で花の一本も供え、毎月続ける。そうすれば、ひょっとしたら10年たって、「よくやったね、もういいよ」と言えるかもしれない。少年を更生させることは被害者を救うこと。
 本当に国会で被害者の立場で議論されているのか疑問。被害者の救済の話が何も出てこない。
 捜査情報については何も知らされなかった。マスコミ報道によって酷い被害もあったが、反面マスコミ報道からしか情報が入らなかったのも事実だ。

葛野氏。(アメリカでの実証的研究を踏まえながら)厳罰によって重大非行抑止する効果はなく、かえって増加するであろう、また家裁や少年院の科学的アプローチの力も弱くなっていくだろう。(詳細は省略します)

斉藤氏。日弁連の意見を説明。被害者保護については弁護士代理人をつけるべきことを強調しました。
 (民主・枝野議員の、刑罰に応報の側面もあり、被害者感情に別の価値もあるのではないか、との質問に対し)被害者感情も重要だがその内容を分析する必要がある。被害者については情報公開を進め、総合的な被害者支援を確立することが必要であり、これなしに少年の権利だけをいうことことはできない、と考えている。まず被害者基本法をやるべきである。

寺尾氏。少年係調査官を35年間。子どもの姿をきっちりつかむことが重要。そのためには矯正現場や補導委託先など生の声を聴いてほしい。表面だけ見ても机上の空論。思春期という大変な時期。結果の大きさを大人と同じ物差しで測ってはだめ。自分も顧み被害者に申し訳なかった、というところから更生が始まる。そのためには時間がかかる。ひとりの人間として認められたことがない少年が多く、人間不信、大人不信になっている。苦しみや痛みだけ与えて反省しろというのは無理。
 原則逆送によって裁判官や調査官の意識は変わり、裁判官は悩まなくなるだろう。
 審判手続きについて。対審構造が少年にとって真実発見にベストかは疑問。真実を語れるようにしていくのが大切。

 岡崎氏。集団で酷い暴行を受けたのに、警察による身内かばいと被害者への偏見によって一対一の素手による喧嘩とされた。検察官も「あなたの主張は全部ウソ」と決めつけた。そのまま裁判所をもとおってしまった。
 (審理に検察官を入れて事実認定が良くなるのか、との問いに対して)検察官に人的パワーがあるかは疑わしい。
 学校も加害者をかばって、知っていたことも教えてくれなかった。
 加害者も被害者と真摯に向き合うのでなければ立ち直れないのではないか。
 妻からの希望でもあるが、多くの遺された母親の思いを拾いあげ、早急に法律を改正するではなく、じっくりと検討してほしい。法律をいじるのではなく、これからの子どもをどう育てるのかを議論してほしい。

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