10月17日委員会傍聴メモ

 法案審議の3日目として、午前中に森田明氏(東洋大教授)・小田晋氏(国際医療福祉大学教授)・原口幹雄氏(東京家政学院大学教授)、午後に児玉昭平氏(山形マット死事件の児玉雄平君の父親)・土師守氏(須磨事件の淳君の父親)・久保潔氏(読売新聞論説副委員)・河上亮一氏(公立中学校教諭)が、参考人として意見を述べました。

 このうち児玉氏・土師氏の意見については、マスコミで広く報道されましたので、その他の参考人の意見の要点を紹介します。

 森田氏・小田氏はいずれも学者ですが、13日の岩井氏・瀬川氏に比べると趣を異にしました。特に小田氏は精神医学者ですが、極めて感情的な表現で「改正」反対論だけでなく従来の家裁の実務を攻撃しました。森田氏は研究者の姿勢を崩しませんでした。

森田氏

 同氏の意見の中心は、日本の旧少年法の検察官先議権にあり、検察官が少年裁判所に送るかどうかの裁量権や微罪処分権限を以て、少年に対して「鬼面仏心」で臨み、他方で少年裁判所は「保護」に純化できる、というもののようです(有斐閣「未成年者保護法と現代社会」)。現行少年法は、これにアメリカ法を「木に竹を継いだ」ものでバランスのわるいもの、という評価になり、今回の改正についても「むしろ検察官先議を導入すべき」という気持ちのようでした。「鬼面仏心」は同氏のキーワードのようで、アメリカの厳罰化については「仏面仏心」から「鬼面鬼心」になりかねない、という批判を述べました。また被害者配慮規定については「重要であるが、行き過ぎると少年法の理念を壊す」と述べました。

小田氏

 最近の少年犯罪は快楽犯・激情犯・愉快犯であり、これに対しして厳しい改正を望む声は「サイレント・マジョリティ」であり、反対の声は「ノイジング・マイノリティ」にでる。これまで家裁は、オヤジ狩りのような悪質なケースにも「非行深度が進んでいない」と言うような独善的な概念で、法外に軽い処分にしてきたが、このようなやり方は「家裁マフィア」であって、関係者の再教育が必要である。また少年刑務所の雰囲気は少年院の雰囲気に比べて遥かに落ち着いている。

 なお後記原口氏の発言を聴いたあとで、またオヤジ狩りの処分について触れ、「少年法を罠にかけるようなもの」で「仏面魔心」というものであり、「全共闘や新左翼の理論ではそれは望ましいだろう」とまで発言しました。

原口氏

 同氏は家裁調査官出身で家庭局の幹部も勤め、調査官として最高の地位にまで登った人です。その意見は、13日の岩井・千葉両氏と似たところがあり、これまでの家裁実務について擁護しながら、与党案についても賛成する、という立場です。

 最近の少年犯罪について、「動機が一見理解に苦しむ重大事件」によって社会が不安や怒りを持つようになっているが、「だからと言って即凶悪化しているということではないのではないか」、少年が行為の重大さや被害者への痛みを自覚するのは「少年院などの長期的個別的な処置が必要」で、「これまで家裁としても大筋で適切な処置をしてきたのではないか」と言いながら、「引き下げや原則逆送についても、調査と家裁の裁量のうえであれば、処遇選択の幅を広げ、より適切な選択ができる」と述べるのです。

 「原則逆送」がなぜ選択の幅を広げることになるのか、いかにも苦しい説明ですが、与党議員からは、もちろん追及はありません。

久保氏

 読売新聞の論説副委員長の立場から予想通りの与党案賛成の意見を述べましたが、被害者にとって報道被害について「マスコミに何らかの法的規制をすることには反対です」といったところ、与党席の2人ほどの議員が非難の野次(言葉は聞き取れず)を飛ばしたのには驚きました。

河上氏

 同氏は、子供の中に、「好きなことは何をやってもよい、きらいなことを、大人の言うことは聴かなくてもよい」という雰囲気ができている、ととりあえず今の状況を抑えるため緊急避難的な力が必要。安定した状況を取り戻したうえで、解決の方法をじっくり考えるしかない、と強調しました。

Home /論文 /すすめる会News / 催し情報 / 活動記録 / 図書  
その他スケジュールやご不明な点は請願署名をすすめる会までお問い合わせ下さい。
東日本事務局 TEL.03-5770-6164 FAX03-5770-6165 Eメール
siten@bh.mbn.or.jp