少年法「改正」反対緊急市民集会
アッピール
現在開かれている臨時国会において与党三党は先の国会で廃案になった案に新たに厳罰主義に貫かれた内容を追加して再上程しています。
私たちは、罰を科せば過ちを犯した少年が立ち直れるとは考えられないし、厳罰を見せしめにすれば少年犯罪が減少するとも考えられません。むしろ、子どもたち全体の未来に大きな影を落とし、「子どもの人権」の後退をもたらすものであると考え、この法案に反対し、法案の撤回を要求します。
(理由)
1. 少年の犯罪は、今日いきなり「極悪人」が登場したかのごとく報道されていますが、むろんもともとそうであったわけではなく、育ってきた過程において必要な保護や真の教育を受けられなかったり、ありのままの個の尊厳を認められないような様々な被害を受けた結果としての悲しい事実であって、その受けた心の傷がしっかり受け止められ、必要な支援を受けられることによって初めて「立ち直り」への努力が可能だと考えます。現行の少年法の理念は、子どもの持つ成長する権利を認め、その権利を社会が支援するというあり方を目指しており、その実現のための体制を強化することこそ重要な課題であると考えます。
2. 「厳罰化」は犯罪少年に対して結果責任だけを追求するだけで、少年法をそこまで追い込んだ社会がその責任を放棄していることの裏返しです。従って、社会は少年を「犯罪」という「不幸な事態」になることがないよう、現在子どもちが受けている「人権侵害」をなくし、子ども主体の「教育改革」や「子育て支援」や「自立支援」などの環境づくりに取り組み、「安心と自信」をもって人生を主体的に生きられるようにしていくことこそ急務であります。
3. この「改正案」は「凶悪な事件」の増加に対応する施策とせれていますが、2000年の犯罪白書によれば昨年の少年の刑法犯検挙者数が減っていることが報道されており(10月13日朝日夕刊)、研究者からも「凶悪化」は幻想であるとの指摘(8月24日朝日)もあります。
さらにアメリカでは本法案と同じような厳罰主義に基づいた法改正をした結果、80年代半ばから90年代半ばにかけて少年の殺人事件は人口比で約2.5倍にまで増え、厳罰化施策では少年犯罪の減少をもたらさなかったことも報告されています。
4. 今日、多くの子どもたちが大人社会が作ってきた教育や社会のあり方が息苦しく、変えるべきだという訴えを様々な形で様々な場所で表現しています。大人社会は子どもたちの日常のその場での「訴え」に応えていくことが大切です。しかし、この「改正案」が通るならば、地域の中で「問題」とされる子どもが今より地域から隔離される傾向が強まり、地域それ自体の「教育力」や「子どもの人権」が大きく後退してことになります(10月13日朝日夕刊)。
5. 本「改正案」は犯罪被害者の方々の真の願いにも応えるものでないと考えます。被害者の方々の願いの多くは「被害者の受けた傷の深さ」を少年がしっかり受け止めて、みづからの加害の事実と向き合い、真に自己改革に責任を負っていくことのではないでしょうか。そのための手当てはこの「改正案」ではできません。むしろ、少年司法や児童福祉、市民参加によるそのための支援ネットワークこそ求められています。
さらに、「被害者救済制度」の制定は急務であり、今までそのことに対応してこなかった政府・行政こそ責任を問われなければなりません。
6. 今日、この法案をめぐっては国民的に意見が分かれており、かつ少年司法や児童福祉、教育の現場、そして何よりも子どもの「意見表明権」を無視して進めないていることは許しがたいことです。この現状においてこの法案を決定すべきではないと考えます。
2000年10月22日
千葉こどもサポートネット
市民ネットワーク・千葉県
千葉県弁護士会
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