少年法「改正」法案の通過に対する声明
2000年11月28日
少年法「改正」法案が本日ついに通過してしまった。
少年法「改正」法案は、少年審判への検察官関与と検察官の「抗告受理申立権」および裁定合議制、観護期間の延長のほか、刑事処分適用年齢を16歳から14歳に引き下げ、16歳以上の少年による重大な事件は刑事処分が原則とされ、少年法の理念を根幹から崩すものである。しかも、少年法のあり方は子どもの将来や日本の社会に大きく関わる。改正の必要性・妥当性について検証すべきであった。このような深刻な問題を含む法案を、わずかの日程でこなすこと自体異常なことである。まして、検証らしい検証もせず、50年にわたる少年法の成果を無視したまま審議が進められた。野党側からもこれら問題の根幹に関する数々の疑問が提示されたにもかかわらず、法案上程者は、誠実な対応をしなかった。結果、審議が進めば進むほど疑問は増すばかりであったが、こうした疑問は放置されたまま採決された。この事態は、はじめから結論ありき、そのものであり、民主主義の否定である。しかも、“所詮、子どもの問題だ”という蔑視・軽視が、このような拙速審議を招いた。わたしたちは、このようなことに強い怒りを表明し、抗議する。
当初自民党案は犯罪抑止を目的にしていたが、上程に当ってこれを削除。「改正」法案では、これが達成され得ないものであることが明らかになったからである。そのため、「規範意識を強化する」ことを目的にしているのだと言いはじめた。
この審議を通じてあらためて思うことは、子ども観の違いである。上程者は、「権利ばかり主張し義務と責任をないがしろにするわがままな子ども」観を前提にして、厳罰化で「規範意識を強化する」というのである。ここには、結果の重大性だけに目を奪われ、社会の中で追い込まれ犯罪に至った子どもの苦しみや悲しみは見えていない。重大とされる少年非行の動機や背景は深く社会病理と結びついたものであること、それまで被害を受けてきたことなどまったく無視されている。ゆえに、子どもにとって刑罰による威嚇は、何の効果もないだけではなく、かえって有害である、ということも見えないのだろう。
「規範意識の強化」を言う中で、今回の意図があらわになった。保岡法務大臣は、規範意識の強化を言う後押しとして、教育基本法・憲法の「改正」をちらつかせたのである。これは、子どものみならず、ひろく市民に対する管理統制を強化する姿勢を示したものだろう。少年法「改正」はその一環であることをあからさまにするものだった。
この「改正」により、少年が犯罪をすれば、その少年にとってほんとうに必要な教育を通じて立ち直るという機会が与えられないことになるかもしれない。刑事裁判や検察官関与に付されることで、子どもが自己の言葉で表現し、自立へのステップとする機会も失われるかもしれない。
しかし、それでも家庭裁判所には裁量が残されている。その裁量を支えるのは、子どもの力を信じそこをサポートするという少年法の理念である。わたしたちは、このことが堅持されるよう監視し、少年法の理念が消されないよう、あらゆる活動をする覚悟である。
「改正」には5年後の見直し規定が盛り込まれた。少年たちを支え、今よりよりよい少年法として見直されるよう、わたしたちは努力し活動する。今回この運動にともにかかわった市民たちと。
子どもを置き去りにした論議を許してしまった責任として、このことを子どもたちに誓うものである。
検察官関与に反対する弁護士の会
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