子どもの視点からの少年法論議を求める請願署名を すすめる会 N E W S
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臨 時 国 会 閉 幕 ー い よ い よ 正 念 場 に このたびの臨時国会でも少年法「改正」法案は審議されないままに閉幕となりました。継続審議については自民・自由・公明が賛成し、民主・共産・社民は反対しました。なお公明は3月の政府案反対の決定は変更していません。衆議院法務委員会の案件は他にないので、1月下旬に招集が予定されている通常国会では、審議入りは確実と思われます。 昨年12月の法制審議会少年法部会で中間答申がなされ(これがそのまま1月の法制審議会総会で最終答申となり、3月の政府案になった)てからちょうど1年たちますが、この間少年法をめぐる社会の関心状況はだいぶ変わりました。 一 年 間 の 変 化 と 発 展 第1に、政府案は「事実認定の適正化」に役立つのか、かえって冤罪を増やす危険はないのか、という問題意識が現実化してきたことです。特に12月に最高裁で弁論がなされ「クロ」判決の見直しが予想される草加事件(2月7日判決)は、検察官が少年に有利な証拠を隠して、事実認定の適正化を妨害した事件として教訓的です。 第2に、犯罪被害者の支援救済活動と立法化の動きが広範囲の人々(弁護士会・弁護士も含めて)によって進められるなかで、成人犯罪・少年非行共通の課題が認識され、これまでのように被害者支援の立ち遅れを少年法のせいにすることが困難になってきたことです。もちろん少年非行に特有の課題もありますが、冷静な議論が可能になりつつある、と言ってよいでしょう。 第3に、子どもの置かれた全体状況への関心が広がってきたことです。大人による虐待などの実態や子どもに与える深刻な影響が社会に認識され、国会でも12月に衆議院青少年問題特別委員会での決議がなされ、虐待防止立法への動きも(NGOを含めて)広がっています。子どもの心の「荒れ」をどうしたらなくすことができるのか、生活と教育の現場に何が必要なのか、これについても冷静な議論が可能になりつつある、と言ってよいでしょう。 国会での審議入りが避けられないとしても、これらの状況を無視した審議は成り立ちません。子どもの権利条約を批准した国の少年法「改正」として恥じるところはないのか、団藤重光先生のいわれるように「世紀の恥辱」ではないのか。国会審議で全面的な深い論議がなされるよう、署名を含めた様々なはたらきかけが必要になります。 みなさん、新しい年を迎えてがんばりましょう。 ミニ特集 「 改 正 」 法 案 は え ん 罪 を 増 や し ま す 法務省は、「事実認定の適正化のために、家庭裁判所の審理の場に検察官が関与する必要がある」と言っています。検察官が関与すると、事実認定が正しくなされるようになるのでしょうか。 14年前に埼玉県で発生した殺人事件で5名が逮捕された草加事件は、少年審判では家裁・高裁・最高裁がクロ、民事訴訟になって地裁がシロ、高裁がクロとなり、現在最高裁に移っていますが、先日(12月9日)法廷での弁論が開かれ、2月7日に判決ということになりました。最高裁で法廷の弁論がなされるのは、高裁の判決を見直す必要がある、と最高裁が判断した場合だけ、というのが慣例なので、草加事件についてもシロとなる可能性が非常に強い、と考えられています。 この事件で検察官はシロを裏付ける証拠(血液型の鑑定結果)を家裁に送らず、やむなく送った後も、懸命に「証拠価値がない」と主張し続けました。12月3日の日弁連シンポジウムで弁護団の清水弁護士は、この証拠隠しも含めた詳細な問題点を指摘しました。またこの日、逮捕された元少年も出席され、15才だった自分が留置場で孤独に苛まされて嘘の自白をしてしまった経過を証言されました。 また12月11日には横浜弁護士会主催の集会で綾瀬母子殺人事件を題材にした劇(弁護士10名が熱演)がありました。この事件は家裁でシロ結論となったのですが、そこに至る審理の途中で警察のひどい証言妨害がされました。少年たちのアリバイを証言しようとした人を、警察に長時間軟禁して証言の撤回を迫り、弁護団が人身保護法という特別な手続きでやっと釈放できたのです。大人でさえ嘘の供述をしかねないような、警察の捜査の実態こそが、家裁の事実認定を歪める最大の原因なのです。 家裁の審理には弁護士(付添人)だけいて検察官がいないから、少年に有利な結論になる、という言い方がされますが、圧倒的に強大な警察が作った証拠が家裁に送られるところから、家裁の審理が始まることを無視した議論です。警察の証拠を批判的にチェックすることが家裁の裁判官の役割であり、そのためにも少年が心おきなく発言できるような場を保障する必要があるのです。 今回の改正案では、検察官が審理に出席する時は必ず弁護士もつけるようになっていますが、それで少年の発言が保障されたことにはなりません。「本当は違うんです」と少年から言われたときに、弁護士は躊躇せずに「ありのままを堂々と言いなさい」とアドバイスできるでしょうか。大阪弁護士会の岩田弁護士は、次のように発言されていますが、これは、少年から親や教師が相談された場合も同じです。 「本当は違うんです」と言われたら 弁護士 岩田 研二郎 最高裁や法務省が進めようとしている検察官関与の制度の導入については、実際に少年事件の付添人活動をしている私たちの実務感覚からすれば、深刻な問題があると思います。 警察や鑑別所で少年に面会したときに、事実の全部又は一部を否認する少年がいたとき、私達はどうアドバイスしてきたでしょう。今までは、「違うことは違うとはっきり主張しなさい」とアドバイスできました。しかし、この改正案では、非行事実を否認することにより、裁判所が検察官関与を決定すると、つぎのような制度的な不利益を少年がこうむることになります。 @少年の非行事実を積極的に立証し攻撃する検察官が登場し、防禦しなければならなくなること。 次にAこの検察官の立証に対して防禦をして、非行事実なしの決定を勝ち取っても、検察官抗告による二度目のトライアルを強いられること。 そしてB何よりも不利益なことは観護措置期間が延長されて身柄拘束が長くなることです。 これまでは否認することによる制度的な不利益は少年にはありませんでしたが、法改正がなされれば、「否認したら不利益がないでしょうか」との少年の問いに、私達は何と答えることになるのでしょう。特に、保護観察処分が予想される事案では、そのような不利益を避けるために、少年が「事実は違うけれど、認めておきたいが、いいですか」と問うてきたときに、それでも「事実が違うなら否認しなさい」と自信をもってアドバイスできるでしょうか。 仮に裁判所がこの制度を限定的に運用するとしても、捜査段階での警察による少年への自白強要の格好の道具にされることが予想されます。 成人事件における人質司法ということが論議されていますが、「否認をすることにより制度的な不利益を受ける」という審判制度で、本当に少年が任意に事実を供述できるのか大いに疑問だと考えます。 また、私達は、現行の少年審判制度において、少年や付添人に、適正手続の権利保障がないことを指摘してきました。現実に、日常の付添人活動で、記録を閲覧謄写したり、家裁調査官や裁判官に面会したり、意見書を提出したりして活動していますが、その記録閲覧権にしても、意見陳述権についても、すべてが裁判官の裁量による運用に任されています。制度的に保障されていないので、付添人が知らなければ、権利にも気づかないということになります。 大阪の弁護士の実践の中でも、近年では、1998年4月21日の最高裁決定(判例時報1639号)で獲得した貴重な判例があります。これは、非行事実が争われている事件で、審判での証人の証言の信用性に関わる捜査報告書を裁判官が捜査機関に依頼して回答を得ながら、付添人たる弁護士には、依頼したことも回答を得たことも知らせないまま、少年側の主張を排斥して、証人の証言の信用性を肯定した事案です。これに対して、最高裁決定は「付添人への通知をするなど少年の防御権を保障するよう配慮すべきで、本件措置は妥当を欠いたもの」とし、少年の防御権の保障を前進させた判例でした。このような当然の権利さえもが保障されていないのです。 少年の厳罰、必罰につながる方向しか考えず、少年の権利保障に目を向けない本改正案は、時代に逆行するものです。 適正な手続での非行事実の正確な認定は、少年の更生の出発点です。そこで、少年の意に反する検察官関与、観護措置期間延長などの制度的な脅しにより、少年が嘘の事実を認め、事実がねじまげられることは、少年法のあるべき方向とはとうてい思えません。 ミニ特集 次号予告 「改正」法案は被害者支援になりません。被害者支援をもっと充実しよう。 (その他、非行と虐待、家裁の充実なども予定しています) ポ ス タ ー ・ チ ラ シ が で き ま し た 。 ポスターはカラーA3版のきれいなもので好評です。事務所・個人宅にもぜひ貼って活用して下さい。 チラシは同じものを白黒A4版にしたもの。(事務局に連絡いただければ無料でお送りします。) 各地の動き・いろいろな動き ★千葉県で12月12日 「少年法改正反対、緊急・市民行動及び市民報告集会」 主催・千葉こどもサポートネットほか 千葉駅前でのビラ配付・署名集め 千葉駅前から県弁護士会館までのデモ行進 県弁護士会館出の集会 東京シューレの子ども・家裁調査官・元児童相談所職員・県高教組委員長・地方議会議員・弁護士による報告 ★三重県で12月18日 子どもたちの現在(いま)を考えるつどい−−少年法「改正」、というけれど 主催・子どもの権利フォーラムみえ 児童自立支援施設(旧教護院)職員・家裁調査官・BBS・大学生・研究者によるラウンドテーブル ★東京・渋谷で12月10日 アムネスティの呼びかけをうけて「人権のためのパレード」に参加 国際人権デーのこの日、約30団体200名が渋谷の夜の繁華街をデモ行進、「請願署名をすすめる会」も6メートルの横断幕とプラカードを以て7人(高校生1・大学生2・成人4)で参加しました。(カツラと法服という変装付きでした。) ★東京・渋谷で11月24日 少年法「改正」していいの? 「検察官関与に反対し少年法を考える市民の会」 坂上香さんからアメリカの犯罪と矯正をめぐる実情(アミティ紹介など) 元家裁調査官・児童館職員・児童養護施設職員の報告・芹沢俊介さんの話 なお、この会に「被害者」を名乗る5名が芹沢さんの話の途中を野次で妨害し、壇上に上ってマイクを奪い、「ぶっ殺す」「何回でも集会をぶっつぶしてやる」などと発言しました。このことについて「市民の会」では「私たち市民はあらゆる力による反対意見の封じ込めに、決して屈するものではありません」との声明を出しました。 今後の予定 ★NHK「地球法廷」が1月8日10時から11時30分まで放映されます。この中で少年法改正問題についても、いくつかの意見が紹介される予定です。(変更になるかもしれません) ★1月19日 検察官関与に反対し少年法を考える市民の会・連続学習会 東京弁護士会5階502会議室(丸の内線・霞ヶ関駅) ◇芹沢俊介さんの話をきく ◇「もがれた翼パート6 HELP ME! 誰か愛して」ビデオ上映 9月に東京弁護士会で上演して好評だった劇をまとめたものです。非行や問題行動の背景にある大人んによる様々な虐待に目を向けたもの。
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