Q1、少年非行は凶悪化しているの?
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ここ数年、強盗事件等が若干増加してますが、殺人、強姦事件は減少しており、一概に凶悪化ということはできないでしょう。しかし子どもたちの成長にとって深刻に受け止めるベき事態が起きていることは確かです。なお、詳しい統計は当ホームページの「少年非行についての統計は?」または、石井、坪井、平湯共著「少年法・少年犯罪をどう見たらいいのか」(明石書店)をご覧下さい。
何が子どもたちを非行に走らせるのでしようか。非行は家庭や学校、地域で居場所を失い、追いつめられた子どもたちのSOSです。
Q2,厳罰化は非行を予防する?
追いつめられた子どもたちは、人間としてのプライドを失い、将来を投げ出して、非行に走っているのです。罰が怖いからといって行動をコントロールできる様にはならないでしょうし、例え一時的に抑えても、別なところでさらに陰湿な形でストレスを吐き出さずにはいられないでしょう。体罰、管理、処罰などの力による抑圧は、子どもの大人に対する信頼をますます失わせ、子どもを荒れ、すさませるだけです。
厳罰化を進めている米国でも、非行の増加に悩んでいます。非行は、大人の社会が危機的になり、子ども時代を奪い、居場所を奪い、子どもを追いつめるから、深刻になるのです。大人たちが変わろうとしなければ解決できません。
14歳、15歳の中学生が刑務所ヘ送られ、教育ではなく懲役を課されたら、社会ヘ戻った時に、適応できず再犯を犯す危険が高くなることでしょう。なお、与党提案では14才、15才については懲役刑でも少年院に収容することになっていますが、新たな矛盾と混乱は避けられません。
Q3,非行少年には何が必要?
非行に陥った子どもは、その怒りや不安、これまでに受けた心の傷をありのまま受け止める大人に出会い、自分の大切さを知り人間ヘの信頼を回復して、初めて自分の犯した罪の重さと責任に気づき、社会人として更生する決意を持つことができるのです。そのうえで教育と福祉による支援を受けることにより、成長していくことができます。
少年法は、この理念を掲げて、そのために必要な制度をととのえています。
Q4、検察官関与って何?
今の審判 | 与党提案 |
Q5,身体拘束期間の延長?
子どもの身体拘束は最後の手段であり、最も短くなければならないことから、少年鑑別所には最大限4週間しか拘束できないとされています。
与党提案では、事実認定のために必要な場合は、最大限8週間拘束できることになります。なお、政府提案では最大限12週間となっていました。
Q6,検察官の抗告権?
現在は、審判に不服があった時、高等裁判所に抗告できるのは子どもの側だけです。それは成長発達の途上にある子どもにとって、結論を早く確定する必要があるからです。
ところが、与党提案では、検察官も抗告受理申立ができるようになります。(抗告受理申立というのは実質的には抗告と同じです)
Q7,被害者はどうなるの?
これまでの日本では、少年犯罪罪の被害者だけではなく、あらゆる犯罪の被害者の権利が、無視され、放置されてきたことは確かです。被害者の心身の苦痛を癒し、損害を回復するために、心理的なケアや、必要な情報の開示、代理人弁護士の選任等のための法的、経済的な援助制度や、公的な被害補償制度、報道被害の防止など、総合的な救済システムが必要です。
こうしたシステムをつくることは、少年法とは別個の問題であり、交通事故の被害者を含め、刑事事件に共通する問題として、緊急に検討されるべきです。
与党提案には被害者への配慮規定がいくつか盛り込まれましたが、まだまだ不十分です。
Q8,国連は何を勧告したの?
子どもの権利条約が批准されて2年後、日本政府は、条約の実施状況を国連に報告しました。1998年国連子どもの権利委員会は、この報告を審査し、6月、日本の子どもたちが、学校での管理、競争教育のストレスのために、心身の成長が阻害されている状況の改善や、学校内の暴力、家庭や施設での体罰、虐待等の解消、子どもの意見表明の重視、子どもにかかわるあらゆる施策への子どもの参加の促進などを勧告しました。
これらの視点は、少年法改正問題にも活かしていかなければなりませんし、非行を予防するために、社会が何をなすベきかの指針として尊重されるベきです。