少年法改正要綱と関連法案等に関わる動き

一場 順子 弁護士


 2月9日、法制審議会が少年法等改正要綱を答申し、これを受けて少年法等の改正法案が今国会に提出されようとしています。

 日本弁護士連合会が主張してきた公的付添人制度が限定的でも可能となることについては評価できますが、保護観察処分を受けた子どもについて、保護観察中遵守事項を守らない場合に少年院に送致することを可能とする、との法案については「二重処罰禁止の原則」に反するとの批判があります。

 また、今回の改正要綱がめざしているのは、14歳未満の触法少年(刑罰法令にふれる行為をした子ども)とぐ犯少年(刑罰法令に触れる虞(おそ)れのある子ども)の処遇について、警察が主体的に調査し、事件として送致し、少年院に収容することを可能にすることといえます。これまでは、刑法上責任能力がないとされている14歳未満の子どもについては、児童相談所が中心となった福祉的対応がふさわしいと考えられ、少年法や児童福祉法でもそのように規定されていました。14歳未満といえば小学校を出たばかりのまだ幼さを残している子どもたちです。そのような子どもが、たとえば警察署の取調室で警察官に質問されて、実際におこったことを正確に警察官に伝えることができる表現力をもっているでしょうか。子どもの発達段階を考えれば、犯罪捜査を職務とする警察官に対してきちんと表現することはきわめて難しいからこそ、そのような子どもには、司法的対応よりも福祉的対応がふさわしいと考えられていたのです。

 今回の改正に対しては、実際に処遇や医療の現場で子どもたちの実情を熟知している福祉関係者や児童精神科医などの専門家から、非常な危惧の声があけられています。

 子どもたちは成長発達段階にあり、可塑性にとんでいて、よりよい指導にあえばみるみる変わっていける力をもっています。そういう発達途上にある子どもをおとなと同様にあつかい、おとなと同じように厳しく処遇すべきなのでしょうか。

 今回の改正案は、日本弁護士連合会もかねてより求めていた取り調べの可視化(強制的誘導的取り調べを防ぐために取り調べの全過程を録画録音する)も実現しないまま、子どもにとって専ら不利益な改正ばかりを進めるということもできるのではないでしょうか。 昨年1月に、国連子どもの権利委員会は、日本政府報告書に対する審査で、前回の少年法改正が子どもの権利条約および少年司法に関する国際準則等の精神に反するのではないか、との懸念を示しました。今回の改正についても、さまざまな意味で、子どもの権利条約および少年司法に関する国際準則等の精神に逆行する結果となるように思われます。

(東京・生活者ネットワーク 生活者通信No.163 2005.3.1)


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