声明

 私たちは、子どもの非行と福祉にかかわっている者です。
 このたび少年法改正法案が国会で審議されていますが、その内容は、低年齢の子どもの非行についての福祉優先原則に重大な影響を与えるものとして危惧しています。
 子どもの健全な成長発達にとって、成育過程における良好な家庭的環境と福祉的配慮が決定的に重要であることは言うまでもありません。また子どもたちの非行等の問題行動の背景に、家庭的環境と福祉的配慮の欠如があることは、最近の家庭内虐待と非行に関する一連の調査でも明らかであり、従って子どもたちの非行を単に処罰の対象として対応すべきではなく、家庭的環境と福祉的配慮を充実させる方向で対応すべきである、ということが、ようやく社会的な合意になってきました。
 ところが上記改正法案は、これに逆行し、直接の厳罰化でこそありませんが、低年齢の子どもの非行にづいての警察と司法の役割を強化し、福祉の役割を後退させ、現行の福祉優先原則を崩しかねないものと考えます。
 以上のとおり、この改正法案に対する危惧を表明します。

平成17年7月

井垣康弘 (弁護士・元家庭裁判所少年部判事)
岩城正光 (弁護士・日本子どもの虐待民間ネットワーク代表・子どもの虐待防止ネットワークあいち理事長)
奥山真紀子 (児童精神科医師・国立成育医療センターこころの診療部部長・厚労省専門委員会委員)
川崎二三彦 (児童福祉司・全国児童相談研究会事務局長)
小林美智子 (小児科医師・日本子どもの虐待防止学会理事長)
小澤正史 (弁護士・日弁連子どもの権利委員会福祉小委員長)
才村真理 (帝塚山大学心理福祉学部教員・厚労省専門委員会委員)
坂井聖二 (小児科医師・子どもの虐待防止センター理事長)
柴田長生 (京都府知的障害者更生相談所所長)
瀬戸則夫 (弁護士・日弁連子どもの権利委員会委員長)
田中島晃子 (元児童福祉司・上智社会福祉専門学校講師)
坪井節子 (弁護士・カリヨン子どもセンター理事長)
徳地昭男 (元児童自立支援施設武蔵野学院前院長・厚労省専門委員会委員)
西澤哲 (大阪大学大学院人間科学研究科助教授・厚労省専門委員会委員)
福島一雄 (全国児童擁護施設協議会・前会長・顧問)
吉田恒雄 (駿河台大学法学部教授・児童福祉法研究会事務局長・児童虐待防止法の改正を求める全国ネットワーク代表)
渡辺茂雄 (児童養護施設調布学園園長)