2006 年4 月3 日
衆議院法務委員会 委員各位
参議院法務委員会 委員各位

子どもと法・21(子どもの育ちと法制度を考える21 世紀市民の会)
代表浅川道雄・味岡尚子・内田良子・新倉修・毛利甚八
「少年法等の一部を改正する法律案」に対する意見書

 私たち子どもと法・21(子どもの育ちと法制度を考える21 世紀市民の会)は、子どもに関する法制度のあり方を見つめ考えている市民団体です。少年法「改正」問題は私たちの中心的な少年法等の一部を改正する法律案の内容は、私たちが求める、子どもたちがいきいき、のびのび育っていける社会とは明らかに違った方向に進むものです。下記の点に留意して、十分検討していただくことを強く求めます。


1、子どもたちの声を反映し、現実を冷静に検証した議論を求めます

(1) 子どもたちを取り巻く状況をもっともよく知っているのは、子どもたち本人です。子どもたちの意見を聴くことなしには、彼らが何を必要とし、われわれおとなは何をしなければならないのか、わかるはずはありません。子どもたちには自分たちに関係する政策に意見を述べる権利があり、行政機関はその意見を考慮しなければならないことは、子どもの権利条約第12 条から明らかです。また国連子どもの権利委員会の最終所見でも、そのパラグラフ28 において、子どもの意見の尊重および参加の促進が勧告されています。触法行為の背景には、家庭機能の不全、虐待といった問題が多く存在すると言っても過言ではありません。子どもたちの声を聴いてください。

(2) 諮問の理由は、少年非行が深刻な状況で、触法少年による凶悪事件が相次いで発生しているとありますが、統計を見る限りそのような事実は認められません。このことは法制審議会少年法部会第1 回会議(2004 年10 月8 日)の議事録にも、法務省の発言として記録されています。また、現状に適切に対処する方法として、警察力による強制的なアプローチが触法行為を減少させるという実証的根拠もありません。

(3) 国連子どもの権利委員会最終所見は、そのパラグラフ17 で、子どものために支出された政府予算の金額と割合を明確にするよう勧告しています。諸外国と比較検討し、触法少年を本来扱う児童福祉の分野に十分な予算措置を施し、子どもたちの命を大切にし、育ちを支援することを求めます。

2、触法行為の調査は児童相談所で行うことを求めます

 警察は犯罪の捜査を行う機関であり、児童福祉機関ではありません。触法行為は14 歳未満の少年による行為であるがゆえに、犯罪ではなく、児童福祉の分野で扱われるべき行為です。また、ぐ犯は犯罪ではなく、ぐ犯に対しても警察が積極的に調査を行うことは、ぐ犯の犯罪化であり認めるべきではありません。国連子どもの権利委員会による最終所見は、「問題行動を起こした子どもが犯罪少年として取り扱われないように保障すること」を勧告しています。このことにまさに逆行しています。
 14 歳未満の子どもたちによる触法行為は結果の重大なものであればあるほど、家庭機能の不全あるいは虐待といった問題が根底にあることが近年明らかになっています。そのような子どもたちに対しては、まず児童福祉の理念のもとで、心から安心できる場所を提供し、専門のスタッフのもとで彼らが人への信頼感を回復し、自己肯定感をもてるように支援していくことが不可欠です。子どもたちは家庭的な雰囲気のもとで自分たちの命と育ちが確実に保障されてはじめて、自己を語れるようになります。警察ではなく児童相談所でのこのようなプロセスを通して、触法行為の存否、動機の解明等が行われることを求めます。

3、14 歳未満の子どもたちを少年院に収容することに反対します

 触法行為を行った子どもたちには上述の通り、まず暖かな家庭的な雰囲気の環境のもとでその育ち直しが保障される必要があります。子どもの権利条約第37 条は、拘禁は最終手段と位置づけており、少年司法運営に関する国連最低基準規則(北京ルール)、少年非行の防止に関する国連ガイドライン(リヤド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則などの国際準則においてもその利用は厳しく制限されています。さらには、国連子どもの権利委員会の最終所見(パラグラフ54−C)においても、「拘禁に代わる措置を強化し、かつ、その利用を増やすこと」が勧告されています。14 歳未満の子どもたちを拘禁を前提とした少年院に収容することは、子どもたちの育ちを侵害するばかりか、国際的にも許されることではありません。
 子どもたちが傷を癒し、人間関係の結び方を学び、自らの行為に向き合い成長していくためには、拘禁を前提とした矯正教育ではなく、暖かい家庭的雰囲気をもつ児童福祉領域での処遇がもっとも適していると考えます。児童福祉分野に対する物的、人的資源の大幅な拡充がまず先決です。

4、保護観察の遵守事項を守らなかった場合に、少年院に送致することに反対します

 保護観察はお互いの信頼関係のうえに成り立つものです。遵守事項を守るように、拘禁を前提とした圧力をかけるということは、根底に、おとなの子どもに対する不信があります。子どもは、どうして信頼で応えることができるでしょうか。制裁を背景にした遵守事項の強制は、子どもをおとなに服従させるものでしかありません。そのような関係では、いっしょに社会で生きていくパートナーとしてのおとなと子どもの信頼関係は育ちません。保護観察官の不足、保護司の高齢化等が以前から指摘されており、まずその面を解決することが先決であると考えます。
 また、保護観察という終局処分を覆し、あらたに少年院収容という処分を決定することは、
一事不再理の原則(憲法第39 条、少年法第46 条)に抵触するものと考えます。

5、親を責めるのではなく、子育ての環境整備を求めます

 子どもの権利条約第18 条にあるように、親が第一義的な養育責任を果たすために必要な援助をすることが国の責任です。国がその責任を十分に果たすことなく親を追及し、断罪することは許されません。国に、親が安心してゆったり子育てができるように環境を整え、条件を整備することを求めます。
以上