バルガー事件のタイムズの記事(1999年12月17日付)
訳は新倉修さん(國學院大學)
少年らが裁判によってこうむった影響部分と少年審判の改革の必要性についてのコメント
The Times
December 17 1999 THE BULGER RULING
Murderers 'suffered fear and trauma'
BY JOANNA BALE
「恐怖とトラウマに苦しむ」殺人者
少年Aと少年Bは極度の恐怖とトラウマを経験したと主張し、このことは、昨日、判決において初めて公表された精神分析評価で明らかにされた。少年たちは、殺人を犯し裁判を受けたことからPTSDに苦しんでいると言われている。鑑定人はまた、無罪の答弁に支障をきたすのではないかと恐れて裁判の終盤まで精神医学的カウンセリングを拒んでいたことも、関係があるとする。
少年Bは、復讐やマスメディア、それに大嫌いな精神医学者をすごく恐れいたと述べている。少年Aは、情緒的に未成熟で、人にどう思われているのかということを恐れていて、報道機関にからかわれていると考えていた。弁護のために少年Aを診断したアーノン・ベントヴィム博士は、公判では証言しなかったが、PTSDとともに、著しい苦悩と罪障感を味わっていると言う。処罰と厳しい応報を恐れていた。博士は、少年Aは未成熟の兆候があり、情緒的にもっと年少の子どものような行動をすると言っている。博士は治療的なケアを推奨する。
ベントヴィム博士は裁判後1年以上経って再び少年Aを診察して、やったことに対して攻撃を受けたり罰せられるのではないかと極端に恐れていると述べていている。
この二人の少年をみたさらに3名の精神医学者も、同様の結論だった。
December 17 1999 THE BULGER RULING
Court reforms needed
BY FRANCES GIBB LEGAL EDITOR
「裁判の改革が必要」
昨日の画期的な判決によれば、殺人など重大な犯罪を行った子どもは、ある裁判官が呼んだような「成人の公開の裁判という完全な厳格な手続」をもはや経験する必要はないことになる。弁護士や刑罰改良家たちは改革はずっと以前から待ち望まれたものであると言い、内務省筋は、将来「子どもにやさしい」刑事裁判所が当たり前になる」ことを認めた。
少年Aと少年Bの裁判は、欧州各地からの論評を促せたが、そこでは、14歳以下の子どもは一般に成人刑事裁判所では扱われず、非当事者型の家庭裁判所または軽い犯罪では少年裁判所で扱われている。イギリス・ウェールズでの改革のモデルになりそうなものは、裁判官も弁護士もかつらやガウンをとり、非公式の会議室のような調度をしつらえた刑事裁判所であろうと言われている。
ジャック・ストロー内相は、「秘密の花園」と彼が呼ぶ少年裁判所で、このような子どもの裁判をやることに反対である。内相はまた、欧州でももっとも低年齢である刑事責任年齢(現在。10歳)を引き下げることにも賛成しないであろう。
子どもと働く法律家や刑罰改良家たちは、少年Aや少年Bのような子どもたちを刑事裁判制度から閉め出すよう求めてきた。
アン・オーアーズ裁判所長は、改革の提案をしたことがあるが、「刑事法院での陪審による裁判は、このような事件を扱うの最適の方法ではない。子どもたちの言い分は、特別の訓練を受けた単独の裁判官が、2名の特別の研修を受けた少年裁判所の裁判官の補佐を受けて、聴くべきだ。」と言う。1996年の司法報告書は、謀殺または故殺で起訴された少年は非公開の審判を受けるべきだと勧告している。
昨日、犯罪者に対するケアと再社会化に関する全国協会(NACRO)のポール・カヴァディーノは、「弁護士に適切な説示をあたるためたっぷり時間をとった成人型の裁判について、子どもたちがその複雑な仕組みを理解したり、その手続や使っている言葉を理解するのは完全にはできない」と言っている。