虐待の心への影響
大会企画シンポジウム「虐待が子どもの心に与える影響」では、児童精神科医の杉山登志郎さん、宇都宮少年鑑別所の藤岡淳子さん、精神科医の秋山正弘さんの三人が登場。
杉山さんは「きちんとした対応をしないとツケが回る」として短期、中期、長期に分けて影響を説明。短期的影響では心的外傷ストレス障害が起こるとし、風邪薬と偽り毒を飲まされていた女性が、赤い薬を見るとパニックになる事例などを挙げ、「フラッシュバックに伴って過剰反応が起きたり、虐待の記憶に空白が生じる」などと解説した。
藤岡さんは虐待と少年非行との関係をテーマに、まず虐待から生じる無力感や絶望感が子どもに自己評価を下げさせ、その怒りが攻撃行動につながるという、被害者と加害者の「円環の構造」を指摘。被害者の一部が変わる分かれ目は、「ゆがんだ価値観を身に付けてしまうかどうか」などと説明した。
秋山さんは虐待体験を持つ大人の患者の印象について「虐待を乗り越えるために、病者として社会に適応する人とか、加害者として適応する人がいる」と述べた。